1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

半導体で終わらない!富士通の「ハード切り離し」 新光電工をJICに売却へ、残る再編の焦点は?

東洋経済オンライン / 2023年12月20日 8時30分

このような経営方針は今に始まったものではない。田中達也氏の社長在任期間(2015年~2019年)中に示され、現在の時田隆仁社長の体制下でも引き継いできた。

ハードウェア機器の製造を含む事業は、工場建設などの莫大な設備投資が必要となるうえ、海外勢との競争が激しく、利益率が低くなる傾向にある。

FDKと富士通ゼネラルは、2024年3月期の営業利益率をそれぞれ0.7、4.7%と予想しており、富士通全体(同8.8%)の水準から大幅に見劣りする。新光電工は、従前2~3%台を推移していた営業利益率が2021年3月期以降、半導体需要の拡大を追い風として一気に10~20%台へと上昇した(2024年3月期予想は15.2%)。ただ市況変動の影響を受けやすく、営業利益の金額ベースでは前期から半減する予想だ。

2010年代半ばの富士通の営業利益率は3%前後だったが、事業再編に伴って改善が進み、時田氏の社長就任後は5~9%台を推移している。

ハードウェア製造からの段階的撤退により、メーカーの面影が年々薄まる富士通。現在の同社の収益を支えるのが、コンサルティングやクラウドサービスを通じて顧客のDXなどを支援するサービスソリューション分野だ。とくに同分野の新たな商材である「Fujitsu Uvance(フジツウユーバンス)」などの開発が、今後の富士通の成長を占う重要な要素となる。

フジツウユーバンスは、複数の顧客企業へ共通して提供するソリューションだ。富士通が長年手がけてきた、顧客企業ごとの細かな要望に応じる「ご用聞き型」のシステム構築とは一線を画している。

富士通にとっては、ご用聞き型と比べても、提供に際して手間や工数がかからないフジツウユーバンスの比重が高まれば、その分だけ利幅の改善が期待される。

ノンコア事業以外でも再編が進むか

富士通は2026年3月期に調整後営業利益率を12%と、2023年3月期実績(9%)から3ポイント改善させる目標を掲げている。これは同期間で、フジツウユーバンスの売上高を3.5倍の7000億円(全社売上高は4.2兆円の予想)に急拡大させることを前提とした数値だ。

富士通は2026年3月期までの3年間に、成長投資と株主還元で合計1兆3000億円(前の3年間の2倍)を投じる計画だ。成長投資の振り向け先はサービスソリューション分野であることを明言しており、このためにもノンコアの事業を手放し、投資の原資を確保することが急務だと言える。

今後の焦点は、FDK、富士通ゼネラルの売却に加え、明確にノンコアと位置付けていない事業でも整理が加速するかどうかだ。2023年11月には、フジツウユーバンスなどを中核としたビジネスモデルへと移行するため、ドイツ事業の一部譲渡を発表している。収益性改善に向けて、再編がさらに進む可能性は大きいだろう。

構造改革のスピードを一段と高めて、DX企業へと脱皮を遂げられるか。経営陣の手綱さばきが試される。

高野 馨太:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください