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裏金システムで露呈した自民党「構造腐敗」の本質 存亡の危機に直面、問われる岸田首相の判断

東洋経済オンライン / 2023年12月20日 7時20分

「第一」「第二」の裏金は20年ほど前から始まったとみられるが、民主党政権(2009~12年)下では自民党への献金は激減。裏金が急増したのは第二次安倍政権以降だとの見方が有力だ。派閥幹部がパーティー券を大量に売りさばき、一部は派閥に収め、残りは個人のポケットに入れた。

その資金は新顔候補の発掘や中堅・若手議員の選挙運動のテコ入れに使われた。最大派閥がアベノミクスで潤った大企業から巨額の資金を集め、それを選挙などに支出することでさらに最大派閥が維持される。アベノミクスへの便乗であり、構造腐敗である。

その裏金システムが明るみに出た。

まず、火だるまになったのが松野博一前官房長官だ。2019年から2年間、安倍派の事務総長を務めていたが、その時期を含めて1000万円を超えるキックバックを受けていた疑いが浮上した。同じ事務総長経験者の西村康稔前経済産業相、現職の事務総長の高木毅国会対策委員長、さらに萩生田光一政調会長、世耕弘成参院自民党幹事長の「5人衆」全員と座長の塩谷立元文部科学相が裏金を受け取っていたという。

安倍派の大野泰正、橋本聖子両参院議員、池田佳隆、谷川弥一両衆院議員にも多額の裏金が判明。安倍派事務局にパーティー券の購入代金をいったん納めて、その後にキックバックを受けて、自由に使ったとみられる。政治資金規正法のほか、所得税法違反(脱税)の疑いが出ている。

東京地検特捜部は臨時国会が12月13日に閉幕したのを受けて、本格的な捜査に乗り出した。自民党最大派閥の錬金術を解明するという「検察の威信」をかけた捜査が繰り広げられる。19日に着手された家宅捜索では、安倍派の事務所から関係書類が大量に押収された。事務担当者、議員秘書が次々と事情聴取され、所属の衆参両院議員への取り調べも予定されている。

岸田首相は14日、安倍派出身の閣僚4人、松野官房長官、西村経産相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農林水産相を更迭、それぞれの後任に林芳正、斎藤健、松本剛明、坂本哲志各氏を任命した。安倍派の副大臣5人と政務官1人も交代。萩生田政調会長、高木国対委員長も年内には更迭される。

安倍派内には「人身御供だ」という不満が募っているが、当面は岸田首相の判断に従わざるをえない状況だ。派閥の会長も決まらないまま、幹部間の綱引きが続いていたが、裏金問題の急展開で、今後は分裂・解体に向かう可能性が大きくなった。

「安倍派切り」で難局をしのごうという岸田首相だが、これまで安倍派に依存していた姿勢を一転したことには、安倍派以外からも批判が出ている。この状態で自民党内の不協和音を抱えたまま、年明けの通常国会を乗り切れるとは思えない。

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