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「タマネギ切ると目に沁みる」意外と複雑な仕組み イグノーベル賞を受賞したおもしろすぎる研究

東洋経済オンライン / 2023年12月29日 18時0分

現在、この催涙成分合成酵素は、ネギ、ラッキョウ、リーキ、シャロット、エレファントガーリックなど、切った時に「うるっ」とくるネギ属植物でも見つかっている。 この2つの酵素の働きを抑えられれば、目に沁みないタマネギが作れるわけだ。

ハウス食品は涙が出ないタマネギを開発

実際、ハウス食品はこの研究を応用し、涙が出ないタマネギを開発、2015年に発表した。重イオンビームを照射し突然変異を起こさせ、酵素の働きがはるかに弱いタマネギを作り出した。催涙成分が出ないだけでなく、辛みもほとんどないそう。10年がかりで開発したこのタマネギ、水にさらす必要もなく、目にも沁みず、匂いも手につきにくいため、より手際よく調理できるということだ。

ちなみに、普通のタマネギを切る時になるべく目に沁みないようにするには、3通りの方法がある。
(1)切る前によく冷やして、酵素反応を抑える
(2)良い包丁で切って、なるべくタマネギの細胞を壊さないようにする
(3)目に沁みる前にさっさと切ってしまう

要するに、手間を惜しまず、道具に投資して、料理上手になれ、ということだ。

この研究は、ハウス食品でレトルトカレーの製造中に発生した謎の現象がきっかけで生まれた。

レトルトカレーの製造では、タマネギとニンニクを混ぜて炒める工程がある。普通はよく炒めると美味しそうなキツネ色に仕上がるところ、ある時、不思議なことに青々とした色になってしまったことがあった。この時は残念ながら、何百キロものタマネギとニンニクを捨てざるを得なかったそうだ。

今井博士が研究について振り返る

この現象が起きた理由を探り再発を防ぐために、タマネギの研究を始めた。今井博士は当時をこう振り返る。

「始めた頃は、まだ遺伝子に関する研究をしたことがなかったので、実験の手引書(初級編)を頼りに手探りで行ったことを今でも覚えています。また、たくさんのタマネギを切って実験していたので、作業着がタマネギ臭くなってしまい洗っても落ちなくなりました。特に、洗濯後にアイロンをかけると部屋中がタマネギ臭で充満するため、家庭では不評というより、ちゃんと仕事しているのかと心配されました」

研究打ち切りの危機も乗り越えてやっとの思いでまとめた研究成果は、著名な学術誌の『Nature』に掲載された。イグノーベル賞の授賞式で今井博士は、タマネギによって泣かされたすべての人、そして人間に食べられた全てのタマネギにも感謝の意を伝えた。

五十嵐 杏南:サイエンスライター

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