郵便番号はあるのに実体がない「幻の地名」の正体 廃れて消えた町もかつて誰かの故郷だった
東洋経済オンライン / 2023年12月31日 20時0分
郵便番号はあるのにそれを用いる住人がいない、現在の地図上に存在しない「幻の地名」。かつては人が住んでいたその地が幻の地名となるまでに、どのような歴史があったのか。地図研究家の今尾恵介氏が解説します。
※本稿は今尾氏の新著『地名散歩 地図に隠された歴史をたどる』から一部抜粋・再構成したものです。
おそらく書く人がいない郵便番号「454-0944」
名古屋に「大蟷螂町(だいとうろうちょう)」という町がある。市域の西側に位置する中川区で、庄内川に面した所だ。江戸時代から大蟷螂村と称する歴史的地名だが、蟷螂はカマキリのことだから、思えば珍しい地名である。
『角川日本地名大辞典』によれば「(地名は)大棟梁により、往古(おうこ)熱田神宮の宮大工が住んでいたことにちなむという」とあって、なるほど転訛したのかと納得しそうになるが、偉大なる大工の棟梁が「大カマキリ」に転じた経緯はよくわからない。あるいはカマキリ顔をしていたからか。
郵便番号は454-0944であるが、この番号を書く人はおそらくいない。全域が河川敷だからだ。
なぜこんなことになったかといえば、旧大蟷螂町のうち人が住むエリアだけ昭和57年(1982)に字の異なる「大当郎」その他に変更されたためだ。
蟷螂の字を他人に説明するのに骨が折れるという意見に従ったとも想像できるが、そちらの郵便番号は1番違いの454-0943となる。このように河川敷だけに残っている幻の地名は全国を見渡せば意外にある。
夕張炭鉱の終わりとともに消えた町
かつて炭鉱の町として栄えた北海道夕張市は昭和35年(1960)に最大人口の11.7万人を記録したが、令和5年(2023)7月末日現在は6593人と約18分の1に激減した。もちろん戦後の「エネルギー革命」で石炭需要が大きく落ち込んだためであるが、特に山深い地域では閉山がそのまま町の終わりに直結する。
夕張市でも人口はまんべんなく減ったわけではなく、大夕張炭鉱のあった夕張川沿いの鹿島地区は特に著しい。
最盛期はここだけで2万人を擁し、南部地区(南大夕張)とともに夕張市から分離独立して市制施行を、という話も出たほどだが、昭和48年(1973)に炭鉱が閉山して人口が流出し、数百人にまで減少したところで現在の夕張シューパロダムの建設が決まり、その後は無人のエリアとなった。地図から地名は消え、今ではそのダムが堰き止める「シューパロ湖」の文字だけが記されている。
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