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【ルポ】能登地震、祖父宅で直面した激しい揺れ とにかく上へ上へ逃げなければならない

東洋経済オンライン / 2024年1月2日 15時30分

石川県七尾市の祖父の家。写真は地震後、1月1日夜(記者撮影)

1月1日、石川県能登地方を中心に最大震度7をはじめとする地震が断続的に北陸を襲った。記者は、石川県の七尾市の祖父宅で大地震に遭遇した。

「ヒロト、お前もついに就職かぁ」。 そんなたわいもない会話をしながら、昨年9月に大学を卒業した従兄弟と日本酒を酌み交わしていたところ、祖母特製のおせち料理が詰まった重箱がカタカタと揺れ出した。

【写真で見る】能登半島地震、石川県七尾市内の様子、亀裂の入った道路や傾いた家屋

1月1日16時ごろ、筆者は5年ぶりに帰省した石川県七尾市の祖父宅で大地震に遭遇した。 当時、集まっていたのは筆者の妻子や父、祖父母ら計9人。最初の振動から若干遅れて各々のスマートフォンがけたたましいアラート音を発する。緊急地震速報だ。

数秒で揺れは収まり、このときは特に被害はなかった。 「ビックリしたね」などと話しながら、筆者はまぁ大丈夫だろうと考え、畳に腰を下ろして盃をまた手にした。

姿勢を保てなくなる激しい揺れ

すると突然、誰かに激しく揺さぶられたように、姿勢を保てなくなった。座布団に手をつき、土下座するような格好で動けなくなる。熱燗は飛び散り、ガッシャンガッシャンと何かが割れるような音も聞こえる。

「ミオを隠して!」 妻の叫び声を聞き、驚き立ちすくむ1歳9ヶ月の娘を1メートルほど先に見つける。はって近付き、腕をつかんで思い切り引っ張る。そのまま、皿や料理が散乱してグチャグチャになったテーブルの下に頭を突っ込ませた。はみ出た下半身に覆い被さり、ひたすら落ち着くのを待った。

どれぐらい時間がたったのか分からない。 ようやく揺れがおさまり、「大丈夫か」と声を掛け合う。 トイレに入っていたという82歳の祖母が右腕を押さえながら出てきた。落ちてきた棚で手首を切ったらしく、5センチほどの裂傷がパックリと開いていた。 買ったばかりだったという祖父自慢の65インチのテレビは無惨に倒れ、液晶の左半分がバキバキに割れていた。

照明も割れ、破片が部屋中に飛び散っている。幸いにも築約50年の木造家屋が潰れることはなかったが、部屋の中はメチャクチャだ。 祖父宅は七尾港から約1キロほどの位置にある。押し寄せた海水が街を飲み込む、3.11の映像が頭の中で蘇った。

「早く逃げるぞ!」 筆者がそう声をかけると、祖父母は我に返ったかのように身支度を始めた。 せんべいや飲料水のペットボトルなど、目についたものを片っ端からバッグに詰め込み、全員で家を出た。 水道管が破裂したのか、あたりは水浸しで土砂が噴き出てぬかるんでいる。 筆者に抱かれた娘は顔を胸に埋め、外を見ようとしない。

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