日本企業が抜け出せなくなった貧乏"症"の正体 いつのまにか儲からない事業が氾濫している訳
東洋経済オンライン / 2024年1月3日 16時0分
近年では、社会課題をビジネスチャンスだととらえて起業する若者が徐々に増え始めている。社会的に大きな「困りごと」は多く存在し、それに困っている人や企業は、その解決のためであれば、多少の高い価格を許容して、新たな商品やサービスを購入してくれる。
とはいうものの、ビジネスモデルの設計を間違ってしまうと、せっかくのビジネスチャンスを見つけても、利益を得ることができずに失敗してしまう。では、儲かるビジネスモデルとはどういうものなのだろうか。武庫川女子大教授で、『グローバル メガトレンド10―社会課題にビジネスチャンスを探る105の視点』著者である岸本義之氏が解説する。
「いいものを安く」の問題点
日本企業には戦略がないと批判してきたのは、経営戦略の第一人者であるハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授である。
ポーターの理論の1つである「3つの基本戦略」によると、企業は、コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略のどれか1つを選択して追求することで利益を高めることができるのだが、日本のメーカーの多くは「いいものを安く」を標榜して、差別化とコストリーダーシップの両方を追求してしまい、どちらも中途半端にしてしまっている。
「いいものを安く」とは、本来は小売業の戦略であって、「いいものをメーカーから安く仕入れる交渉力」によって消費者にお買い得な商品を提供するというものである。メーカーとしては、逆に「いいものは高く」売るべきなのが、それを追求していない。
また、ポーターの「5つの力」の理論によると、業界内の競合、新規参入の脅威、代替の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力が弱いところにポジショニングをとることで、企業は利益を得ることができるのであるが、日本企業は、それらの5つの力が強いところに陣取って、「歯を食いしばる」ことを美徳としてしまっている。
特に多くの消費財メーカーは「買い手の交渉力」の強い量販店に販路を依存してしまっていて、メーカー同士(および小売のプライベートブランドと)の過当な価格競争にどっぷりとつかってしまっている。
そうした危機的な状況から脱出するというのが、本来の経営戦略のはずなのであるが、多くのメーカーは高度成長期以来のビジネスモデルの成功体験を踏襲することしかしてこなかった。製造に弱みを抱える欧米メーカーを撃破するところまではよかったのだが、製造に強みを持つ韓国や台湾、中国のメーカーに同じ戦いを挑まれ、完全に勝ち目がなくなっている。
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