定番のオレンジジュースで「休売」が相次ぐ理由 果汁不足と円安直撃、再開メド立たない商品も
東洋経済オンライン / 2024年1月3日 7時50分
こうした状況に物流費などの高騰も加わり、オレンジジュースの値上げが相次いでいる。
キリンビバレッジは、前述の「トロピカーナ 100%」(900ミリリットル)を2023年8月に販売再開すると同時に、90円値上げして、希望小売価格を税別350円とした。他方、同一シリーズのアップルやグレープなど別フレーバーの品は同260円のまま。現状、オレンジジュースの値段が突出して高い。同年10月には「トロピカーナ 100% オレンジ」の330ミリリットルペットボトルも値上げした。
雪印メグミルクは、「ドール」ブランド商品を2022年から複数回値上げしてきた。一連の値上げ前は税別95円だった200ミリリットル商品は、現在同115円となっている。
ただ、オレンジだけ高い値段にはしていない。200ミリリットル商品はフレーバーが10種類あり、その中から「選ぶ楽しみ」を感じてもらいたいという想いが根底にある。一方、比較的原価が高い450、1000ミリリットルに関しては、オレンジジュース商品を休売中であり、今後「200ミリリットル商品とは異なる検討もあり得る」(同社の平谷氏)という。
さらに雪印メグミルクは2023年4月、「ドール」ブランドから「Juicy Plus 1日分のマルチビタミン オレンジミックス」を発売した。オレンジ果汁を中心に、グレープフルーツやぶどう果汁がブレンドされており、1本で1日に必要な複数のビタミンが摂れる。「ドール」ブランドのこだわりである果汁100%は維持しながら、栄養素の訴求を通じて消費者の健康ニーズに応えることを意識した商品だ。
「オレンジ果汁100%」など1種類の果汁で製造した商品に依存せず、果汁ミックスジュースをラインナップに加えることは、「安定した事業継続のための一戦略と言えるかもしれない」(平谷氏)。ある果汁の調達が難しくなった場合の備えにもなるというわけだ。
「バヤリース オレンジ」(1500ミリリットル)を休売中のアサヒ飲料も、「オレンジ果汁含有商品の安定供給に向けて、商品構成の見直しを図る」としている。
解決の糸口は原料調達先の多角化
オレンジジュースの安定的な供給に求められるのは、1つの輸出国や少数の取引先に依存しない調達だ。
例えば輸入量が極端に減った2021年は、ブラジルからオレンジ果汁を十分に確保できず、メキシコ、イスラエル、スペインなどからの調達が増えた。2023年もブラジルからの調達が困難になったことから、「オレンジ果汁の獲得のために、今は各社が世界中を探し回っているのではないか」(飲料企業関係者)。
国産原料への注目も集まる。
これまでオレンジジュースに用いられる果汁は、比較的安価に調達可能な輸入品が多かった。しかし、最近では輸入オレンジ果汁よりも国産みかん果汁の方が安く手に入る場合がある。このため国産みかん果汁原料の使用を検討するメーカーもある。
だが、国内のみかん収穫量は減少傾向にある。2022年産は2020年産に比べ11%も減少した。また、みかんは生食用への仕向けが優先され、余ったり生食用に回せなかったりしたものが果汁等の加工用に仕向けられる。実際、2018年から2021年産の国産温州みかんの生果収穫量のうち、果汁向けに処理されたのは約3〜6%と少ない。
これまで何気なく飲んでいたオレンジジュースもまた、世界的な天候不順や為替の影響を受ける。2024年はオレンジジュースをスーパーで気軽に買うことができるようになるのか。その見通しはまだ立っていない。
田口 遥:東洋経済 記者
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