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佐川急便「2年連続値上げ」への危機感とプライド 本村社長が訴える「価格転嫁が進まない」大問題

東洋経済オンライン / 2024年1月4日 7時50分

――本村社長は1980年入社です。当時の待遇はどうでしたか?

300ページぐらいある分厚い就職情報雑誌をみて、その中でいちばん賃金の高い会社を選んだんです。その前の仕事のときに佐川急便のドライバーのお兄さんに話を聞いて「きついですよ」なんて言われていたけど、本当にきつかった(笑)。

初任給は高かった。平均的なサラリーマンと比べても賃金は高くて稼げたし、昇給も早かった。ただ、長く続かない人も多かったと思う。40年以上前なので世の中もバブルに近い。携帯もパソコンもない時代に、荷物が翌日着くというのはなかなかなかった。昔なので労働状況など問題はあったと思うが、そんな時代もありましたね。

――ドライバーが積極的な選択肢になる時代だったわけですね。

当時は稼いで車を買いたいとか、家を買いたいとか、そんな人も多かった。仕事はハード、きついなどと言われるが、きちんと営業成績で評価されていた。やればやっただけ評価してもらえる点で、昔からやりがいのある会社だった。

セールスドライバーは荷物を届け、集めるだけではなく、営業で荷物を増やすことも仕事だ。営業マンとしてお客様に何をすれば喜んでいただき、荷物を出荷してもらえるか。40年前もそう考えていたし、それが面白かった。今でも受け継がれていると思う。

――どうすれば若い人材がドライバーを目指すようになりますか?

ひとつは女性ドライバーの活躍で、今後もっと戦力にできると思っている。倉庫内の作業では女性も活躍しているけど。女性でも扱える荷物を中心に任せるなど、このあたりは考えていく必要がある。

仕事の魅力も伝えていきたい。物を運ぶだけでなくて営業活動もあるし、提案部隊に配属されることもある。また、Xフロンティアなどの最新施設を見てもらえばわかるが、多くの人は、荷物がどう流れているかを知らないと思う。「物流は最先端の取り組みをやっている」とアピールしていくことも必要だ。

あとは仕事の重要性をどう伝えていくか。物流会社がなければ物を運べない。日本の経済も弱まるだろう。大事な仕事なのだから、賃金だって大切な仕事に見合った賃金であるべきだと思う。とっておきの秘策があるかというと難しい。全体的には賃金や労働環境の改善が必要になる。

やはり、日本はサービス業の賃金が低すぎる。「安くすることが美徳」ではない。飲食も、保育も、介護などもそう。こうした賃金が上がってくると、変わってくるのではないか。

プライドを持てる会社にしたい

――「業界は2024年を機に変わっていった」というように、よい変化を起こせるでしょうか?

例えば食品の価格が値上がりしても、それを受け入れて食べるわけだ。それでも「トラックの運賃値上げは受け入れない」というのがこの二十数年だったと思っている。ほかの産業と同じように、当たり前のように価格転嫁が認められるようになっていくことが重要だ。そうなれば、業界もしっかり持続できる形になっていく。

佐川急便としても「あの会社がないと困る」と思われたい。「ドライバーがかっこいい」とかより、より必要とされたい。顧客企業にも、個人の方にも、多くの人に必要とされて、もっとプライドを持てるような会社にしたいと思っている。

そういう会社なら社員ももっと頑張れる。パートナー企業にも「あの会社と一緒に仕事をやっているんだ」と思ってもらえるだろう。ぜひそうなりたいですよね。

田邉 佳介:東洋経済 記者

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