E.クラプトンも惚れた日産の洒落者「フィガロ」 今も英国で愛される1990年代の「パイクカー」
東洋経済オンライン / 2024年1月7日 11時20分
開けるときには、運転席足元のスイッチでトップを収めるトノカバーを開け、ソフトトップ前端のロックを外したあと、車外に降りてトップを畳んで格納、ベルトで固定してトノカバーを閉めるという手順だった。
キャンバストップの操作としては面倒なものだが、この手間が逆にスポーツカーのような特別なクルマだと感じさせたのも事実である。
リヤウインドウがガラスで折り曲げることができないこともあり、トップの格納部分は前後に長い。そのためキャビンは、後席が狭い「2+2」。
トランクはリヤのナンバープレート周辺だけが開口部で、内部はスペアタイヤが陣取っていたこともあり、荷物スペースはほとんどなかった。良い方向に捉えれば、この点もスポーツカー的だった。
ボディカラーはライトグリーン、ライトブルー、グレー、ベージュの4色で、いずれも今風に言えばアースカラーと呼べる、淡い色調だった。つまり、相棒やバナナマンの番組に出てくるブラックやイエローはオリジナルではない。
いずれのカラーでもルーフはホワイトで、インテリアもアイボリーで統一されていた。
しかも、メーターの文字盤はアンティークウォッチ風でスイッチの一部はトグルタイプ、シートは本革張りとするなど、カジュアルテイストだったBe-1やパオとは一線を画しており、パイクカーの中でも特別な仕立てだった。
パイクカーで唯一のターボエンジン搭載
メカニズムでそれまでのパイクカーと違っていたのは、1.0リッター直列4気筒エンジンにターボが装着されていたことだ。ここからも格の違いが伝わってきた。
ベースとなった初代マーチには、1.0リッター自然吸気の、ターボも用意されていた。また、ラリーに出場するため、排気量を930ccに縮小する代わりにターボとスーパーチャージャーを装着したツインチャージャーの「R」および「スーパーターボ」もあった。
トランスミッションは、Be-1とパオでは5速MTと3速ATが選べたのに対し、フィガロでは3速ATのみ。この点でもキャラクターの違いをアピールしていたようだった。
価格は187万円。当時のマーチ・ターボが約110万円、パオのキャンバストップが約150万円だったことを考えても高価だった。でもBe-1から始まったパイクカーの人気はこのころも健在で、当初8000台限定の予定だった生産台数は2万台に増やされ、3回の抽選でオーナーが決まった。
きっかけはエリック・クラプトン
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