子育て支援金「国民負担増加なし」のカラクリ 医療費の自己負担増加は負担増ではないのか
東洋経済オンライン / 2024年1月7日 10時0分
ところが、岸田首相は、国民負担の増加なしに少子化対策を実現すると強調してきた。上記のようなことになれば、この説明と矛盾するのではないか?
矛盾するという報道もある。それによれば、保険料の引き上げは不可避だが、それにもかかわらず、12月20日の大臣折衝で、賃上げ措置による社会保険の負担は負担増と見なさないと合意した。これは「見せかけ」の負担ゼロだという議論だ(注2)。
ただし、私がチェックしたかぎり、昨年12月20日の大臣折衝に関する厚労省の発表には、そのような「合意」は記されていなかった。
(注1)武見大臣会見概要(財務大臣折衝後)、厚生労働省、令和5年12月20日。
(注2)「微減の裏でやっぱり膨張」、朝日新聞、12月23日。「見せかけ」の負担ゼロ、朝日新聞、12月25日。
医療保険の保険料については、現時点では何も提起されていないし、議論にもなっていない。したがって、大臣折衝でその扱いについて議論がなされたとは思えない。
ただし、医療費全体が増えれば、保険料を引き上げなくとも、患者の自己負担は増える。これを「負担」と見なすかどうかは、重要な問題だ。
「国民負担率」という概念があるが、これは、税および社会保険料の国民所得に対する比率として定義されている。自己負担はここには含まれないので、それがいくら増えても、国民負担率は変わらない。だから、保険料率を引き上げない限りは、岸田首相がいうとおり、国民負担の増加なしに少子化対策を実現できることになる。
この説明は、形式的に言えば間違いではない。ただし、これが普通の人の感覚に合わないことも間違いない。
自己負担は国民負担でないのか?
自己「負担」の増加が国民「負担」の増加でないというのは、語義矛盾のような気がするし、何よりも、国民の一般的な感覚には合わないだろう。病院の窓口で支払う金額が増えるのに、「これは負担増ではありません」と言われて、納得する人はいないだろう。
しかし、これは難しい問題を含んでいる。例えば、公的年金の給付を削減したとしよう。そうなれば年金生活者の生活は苦しくなるから、負担は増加したといってもよいだろう。しかし、年金の給付額がいくら減ったところで、国民負担には影響がない。形式的に言えば、医療費自己負担の増加は、これと同じ問題だ。
つまり問題は、「国民負担」の定義が妥当かどうかということなのだ。現在の定義であれば、医療費自己負担がいくら増えても、国民負担が増えないと政府が言うのは当然だ。しかし、その定義が妥当なものかどうかが問われているのである。
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