中国の新興EVメーカー「超急速充電池」を自社開発 吉利系「極氪」が新型車に搭載、電池外販も検討
東洋経済オンライン / 2024年1月9日 18時0分
中国の新興EV(電気自動車)メーカーの極氪(ジーカー、正式社名は極氪智能科技)は2023年12月14日、超急速充電に対応したリン酸鉄系リチウムイオン電池を自社開発したと発表した。同社が「金磚電池(金のレンガ・バッテリー)」と名付けた新型電池は、15分間の充電でEVの航続距離を500キロメートル伸ばすことができるという。
【写真】リン酸鉄系リチウムイオン電池は中国メーカーによる改良を経て、EV向けに十分な航続距離を確保できるようになった。写真は極氪が発表した金磚電池
極氪は2021年3月、中国の民営自動車大手の吉利汽車(ジーリー)から分離独立して発足。現在は「極氪001」、「極氪009」、「極氪X」の3車種を販売しており、2023年11月に新型車「極氪007」の販売予約を開始した。金磚電池は、この極氪007に搭載される予定だ。
同社は自らを「ハイエンドのスマートEVブランド」と位置付けており、既存車種の車載電池はすべて(高価だがエネルギー密度が高い)三元系リチウムイオン電池を採用していた。リン酸鉄系リチウムイオン電池の搭載は、極氪007が初めてとなる。
体積利用率は「トップレベル」
リン酸鉄系リチウムイオン電池は、正極材にコバルトやニッケルなどの高価な金属を使わないため、三元系電池に比べて製造コストが安く、安全性の面でも優れているとされる。
だが、(従来のリン酸鉄系電池は)単位質量・容積当たりのエネルギー密度では三元系電池にやや劣り、充電スピードも及ばなかった。そんななか、極氪は金磚電池の電極と電解液の組成を改良し、三元系電池に迫る充電速度を実現した。
さらに、金磚電池は電池パックの内部構造を見直し、超薄型の断熱材や液冷式の一体型冷却パネルなどを採用してコンパクト化を図った。極氪の副総裁(副社長に相当)を務める謝世浜氏によれば、金磚電池の体積利用率(訳注:電池パックの体積に占める電池セルの割合)は83.7%に上り、世界のトップレベルだという。
中国の電池メーカーは過去数年、リン酸鉄系リチウムイオン電池の改良を競い合い、大きな成果を上げてきた。電池セル単体のエネルギー密度は三元系電池に及ばずとも、電池パックに組み上げた状態では、EVユーザーが求める必要十分な航続距離を確保できるようになっている。
そんななか、中国のEVユーザーの関心は(航続距離の長さから)充電速度に移りつつある。中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)も、超急速充電に対応したリン酸鉄系リチウムイオン電池の「神行超充電池」を2023年8月に発表した。
CATLとの協力関係は継続
極氪の安聡慧CEO(最高経営責任者)の説明によれば、金磚電池の工場は第1期プロジェクトの年間生産能力が24GWh(ギガワット時)。同社は生産した電池を自社製EVに搭載するだけでなく、吉利汽車のグループ企業を中心とする社外への販売も検討している。
注目されるのは、安CEOが今後の電池の研究開発について「わが社はリン酸鉄系リチウムイオン電池にフォーカスし、三元系電池の研究開発や生産は手がけない」と明言したことだ。
この発言は、極氪と(電池サプライヤーの)CATLの関係に配慮したものと受け止められている。同社の既存車種が搭載する三元系電池は、全量をCATLが供給してきたからだ。「CATLは非常に重要な戦略パートナーだ。わが社は今後も(三元系の)電池を供給してもらう」。安CEOはそう強調した。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は2023年12月15日
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