「人の話をよく聞く」トップが大企業で増えた必然 「人本主義的な経営」が見直されている
東洋経済オンライン / 2024年1月9日 17時0分
「資本主義の終焉」「資本主義は限界を迎えている」としばしば言われるようになりましたが、資本主義の「魔力」は強力で、なかなか脱することができません。しかし、マッキンゼーなどで活躍し、現在は京都先端科学大学教授を務める名和高司氏は、日本型経営にこそヒントがあると指摘します。
※本記事は名和高司著『パーパス経営入門』(PHP研究所)の内容を一部抜粋したものです。
地球からの警告
1972年、スイスに拠点を置くシンクタンクのローマクラブが「成長の限界」というレポートを発表し、大きな反響を呼びました。システムダイナミクスというシミュレーション手法を用いたところ、次のような結論が導き出されたのです。
「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」
そして2009年、リーマン・ショックによる世界金融危機の最中に、ローマクラブが「ファクター5」というレポートで次のような試算を公表しました。
「地球上の70億人全員がアメリカ人と同レベルの資源消費性向を持つと、地球が5つ必要となる」
「ファクター5」では、資源消費を5分の1以下に抑えるためには、豊かさを経済(GDP)ではなく、生活の質(QOL)に求めるべきだと主張しています。つまり、Efficiency(物質的効率)からSufficiency(精神的充足)へのパラダイムシフトの重要性を唱えたのです。
「成長の限界」から50年、「ファクター5」から十数年。世界はやっと「このままでは地球が危ない」という指摘に耳を貸すようになってきました。
それでも変われない世界のトップたち
しかし、世界の資本主義社会のリーダーたちは、資本を基軸とする発想からいまだに抜け出すことができていません。
毎年1月にスイスのスキーリゾート「ダボス」で開催される「世界経済フォーラム年次総会(通称・ダボス会議)」には、世界トップクラスの知性を持つとされる人々が集まります。ここでここ数年、中心テーマとなっているのが「資本主義の終焉」です。
しかし、そこで飛び交っているのは「知識資本主義」や「マルチ・ステークホルダー資本主義」などという言葉で、実態は資本主義を再定義して、未来に向けて何とか延命しようという本音が痛ましいほど透けて見えます。
ここに集まっている人たちは世界中の資本主義社会の頂点に立つリーダーたちである以上、当然のこととも言えますが、「世界トップクラスの知性」と呼ばれる人であっても、意識変革はなかなか難しいということを物語っています。
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