1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「紅白歌合戦」最低視聴率でも評価悪くないワケ YOASOBIとK-POPアイドルの圧巻のパフォーマンス

東洋経済オンライン / 2024年1月12日 12時10分

つまり2023年の紅白はJ事務所が抜けたため女性の視聴率が下がった一方で、高齢者が好む歌手がほとんどいなくなったためこの層の視聴率も減った、と解釈できる。

紅白の「これまでと異なる点」

さてここからは、今回の紅白についての私の印象と評価を述べてみたい。実は元々、当然下がるであろう視聴率を示した後、もはや紅白歌合戦は時代に求められなくなったのだから、終了年を決めて番組を終わらせる決断をすべきだと書くつもりだった。公共メディアを標榜していく中で、惰性で続けてきた紅白歌合戦はもう不要だと主張する予定でいた。

ところが2023年の紅白歌合戦に、私は惹きつけられた。音楽番組として楽しんだだけでなく、そこにNHKが今後目指すべき公共性の一つの姿が見えた気がしたのだ。報道や情報だけでなく、音楽を届けることにもこれまでとは違うNHKの新しいミッションがあると感じた。

実際、今回の紅白は視聴率が最低と報じられても、内容を批判する伝えられ方はあまりしていない。ここ数年は、視聴率最低記録更新、もはや存在意義なしと罵るような記事が目立ったものだ。またネットでの評判も決して悪くなく、いくつかのシーンに心を動かされたとの投稿も多くみた。

私が感じたのは、紅白はJ事務所と訣別することで、これまでとはまったくちがうエンターテインメントの新たな地平に立てたのでは、ということだ。それを象徴したのがクライマックスでYOASOBIがグローバルでもヒットした「アイドル」を歌い、次々に登場するグループが目を奪われるほどレベルの高いダンスパフォーマンスでステージを彩った場面だ。あのとき私は、今までのテレビでは見たことがなかったものを体感できた気がする。

そもそも紅白とは何だっただろう。私が子どもの頃、紅白はその年に流行した歌謡曲や演歌が歌われ、一年の歌謡界を総決算するようなイベントだった。そしてそれら歌謡曲とはテレビが流行させたもの。だから紅白は、テレビが世に広めた曲を、テレビが人気者にした歌手たちが歌う、テレビによる音楽の「まとめ」の時間だったのだ。

当時は「レコード大賞」も同じ大晦日に放送され、大賞や新人賞を受賞した歌手たちがTBSの車でNHKに向かうと言われていた。レコ大とセットでテレビが作った流行歌を総ざらいするのが紅白歌合戦だった。

そうした流行歌はテレビ局やレコード会社や芸能事務所が作り出すもので、いわば大人たちが決めるものだった。「レコード大賞の受賞曲って事前に決まってるんだぜ」と昭和の子どもたちはわけ知り顔で話していた。芸能界はどこかそんなうさんくさいもの、大人たちの企みで構成されるものに見えていた。とはいえ、そんな中に自分が共感できる歌や歌手たちを見出して自分のもののようにも感じていたわけだが。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください