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魚が獲れないのを海水温のせいにする人の盲点 「サンマが豊漁に戻った」と思う人が知らない真実

東洋経済オンライン / 2024年1月13日 13時0分

こうして客観的なデータから眺めてみると、海水温の上昇だけが魚が減っている原因ではないことに気付くはずです。また魚の資源が海水温の上昇により、いくらか北上している傾向はあります。しかしながら、東南アジアの国々の水産物資源が、日本の沖合に回遊して漁獲量が増えているということもありません。上の表をご覧いただくと、1980年代にいかに日本の漁獲量が多かったのか、そして他国と比べて極端に漁獲量が減少していることがわかるはずです。

なお上のグラフは全球平均の海水温の変化を示しています。海水温の上昇幅は過去100年で1℃弱です。また右肩上がりに上がり続けているわけではなく、長い年月をかけて凸凹を繰り返しながら少しずつ上昇しているにすぎないことを付け加えておきます。

印象に残ったオマーンの漁業会社との話

筆者は漁業・水産関係の国際フォーラムで講演する機会がある数少ない日本人です。このため世界の漁業関係者とやりとりする機会があります。昨年の国際フォーラム(Pelagic Fish Forum)で、印象に残る話がありました。オマーンの漁業会社の方が声をかけてきたのですが、オマーンも日本と同じで漁期は決まっているが、数量での管理がされていないと。このままだと日本と同じことになってしまうと危惧していました。

そこで同国のデータを見たところ2010年代の半ばから4倍強に生産量が増えていました。これは資源量が増えて漁獲量が増えたのではありません。漁船数増加や漁具の発達によるもので、まさに「乱獲」が始まっていることが見て取れます。科学的根拠に基づく数量管理が実施されなければ、生産量が急激に減少し始めて大きな打撃になります。

生産量が減り出すと、それまで投資された漁船・漁具・加工場などが余剰となり、それらを稼働させるためにさらに「乱獲」が進む。まさに日本全国で起きている負の連鎖と同じことが起きてしまうのです。

漁獲量が増えているといっても、資源量が増えたのではなく、単に漁船が増えたり、漁業機器が発達したりといったことが理由となることがよくあります。これは極めて危険な状態で、漁獲量が長期にわたり増加し続けることは決してありません。

そして漁獲量のピークを過ぎた後に漁獲量が減り始め、日本のように漁獲量が減ってしまい、地方経済や消費者に悪影響を与えてしまうのです。一方で、漁獲量の減少に対して、環境などに責任転嫁しなかった国々もあります。乱獲を認めて資源管理を進めたノルウェーやニュージーランドなどでは、水産業が見事にV字回復して現在に至っています。

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