1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

日本の電機メーカーはCESで「ど派手演出なし」 韓国・中国勢を横目に新製品展示から距離置く

東洋経済オンライン / 2024年1月13日 8時0分

次のコーナーでは、プラスチックに代わる素材としてパナソニックが独自に開発している「kinari(キナリ)」の説明と、サーキュラーエコノミー(循環経済)についての解説がある。資源の最適な活用と地球環境保護のためにパナソニックが行っている活動が紹介されている。

さらにその次のコーナーまで来てやっと具体的な商品の展示がある。電子レンジやひげそり、ヘアドライヤーなどの得意とする製品が並ぶ。ただ強調されているのは性能ではない。それぞれの製品を使うことで「環境への負荷をどれぐらい下げられるか」だ。

新製品の展示が少ないのはソニーも同様だ。ソニーは映画の撮影をシミュレーションできる技術や撮影スタジオを模したセットを展示したほか、EVのモックアップ(実物大模型)や「プレイステーション5」の新作タイトルの先行プレイなども用意した。

そのほか、タイやアメリカ・シカゴ近郊で展開する「ロケーションベースエンタテインメント」についての展示も行った。それぞれの展示は最新技術を用いたものだが、ソニーがすでに顧客向けに提供しているものがほとんど。テレビやカメラといった消費者向けエレクトロニクス製品単体の展示はなかった。

振り返ってみると、2014年ごろはハイビジョンの4倍高画質という4Kがもてはやされ、CESでもソニーやパナソニック、シャープなど日系メーカーがこぞって最先端のディスプレーを展示していた。

「あの頃はみんなテレビの“薄さ”をどうやって見せるかに必死だった」。ある日系メーカーの関係者はそう苦笑いする。いかに魅力のある新商品を開発・展示できるかが焦点となった時代だった。

しかし、この10年間でコロナ禍も経験し、日本のメーカーを取り巻く状況は様変わりした。テレビを中心とした消費者向けエレクトロニクス製品の分野では中韓勢との価格競争で大敗。ブランド力ではアップルやグーグルなどアメリカの巨大テックに太刀打ちできなくなった。

結果として、日本の電機メーカーのビジネスは個人向け中心から法人向けへと大幅な舵取りの変更を迫られており、ソニーや日立製作所などビジネスモデルの転換に成功した企業から収益性が改善してきている。CESで日本企業に消費者向けの新製品展示がほとんどなかったのは、こうした理由からだろう。

今は受け入れられなくても地道に

日本企業のように自社が法人向けに提供するサービスの体験や、環境保護への貢献を示す展示のあり方は、今後海外のメーカーにも広がっていくのだろうか。

別の大手日系メーカーのブース設計担当者は、「環境対応ができない企業はこの先淘汰されると思っている。今はまだアメリカで受け入れられなくても、地道に何度も展示することで認知度を上げていきたい」と話した。

豪華絢爛な新製品展示とは一線を画し、環境やサステナビリティ、インクルージョンという新しいテーマに重点を置いた日本企業の展示が「先進的だった」と評価される日は来るのか。それとも派手な展示にかき消されてしまうのか。来場者の目利きもまた試されている。

梅垣 勇人:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください