1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

航空業界の失敗から学ぶ姿勢が導いた「奇跡」 「個人」ではなく「システム」を見る大切さとは

東洋経済オンライン / 2024年1月15日 13時0分

マクブルーム機長は、燃料切れ事故を起こしたものの、パイロットとしてはすばらしい技術を示した。建ち並ぶアパートを避け、木々をかわしながら、90トンのジェット機が地面に墜落する衝撃を最小限に抑える場所を探して、100人以上の乗客の命を救った。

しかし彼は非難を浴びた。航空業界では失敗を個人的な問題に帰してはならないという声が大きかったが、世間一般の人々は、事故のときに操縦桿を握っていたマクブルーム機長を責めた。彼らの怒りはすさまじかった。

「訓練を積んだパイロットが燃料切れに気づかずに、問題なく着陸できたはずの飛行機を墜落させるとは何ごとだ!」

マクブルーム機長は、事故後間もなく引退した。そして、それから3年もしないうちに妻と離婚している。彼が亡くなる8年前の2004年、事故関係者の懇親会が開かれたが、生き残った乗客の1人エイミー・コナーは、そこで会ったマクブルーム機長をこう描写している。

「とても傷心している様子で(中略)見る影もありませんでした。操縦士のライセンスを失くし、家族を失くして、残りの人生がめちゃくちゃになってしまったんです」

彼の悲劇(そう呼べるとすればだが)は、人間の認識力やコミュニケーション能力について、まだ十分に理解されていなかった時代にパイロットをしていたことだ。当時のシステムには潜在的な問題があった。失敗はいつ起こってもおかしくない状態だった。

大統領に称えられたサレンバーガー機長も、もし同じ状況に立っていたら、同じ失敗を犯していたかもしれない。彼が成功して英雄となれたのは、航空業界がそれまでの失敗から学んでいたからだ。

これは、謙虚なサレンバーガー機長自身が認めている。「ハドソン川の奇跡」の数カ月後、あるテレビ番組のインタビューで彼は我々に貴重な知恵を授けてくれた。

我々が身に付けたすべての航空知識、すべてのルール、すべての操作技術は、どこかで誰かが命を落としたために学ぶことができたものばかりです。(中略)大きな犠牲を払って、文字通り血の代償として学んだ教訓を、我々は組織全体の知識として、絶やすことなく次の世代に伝えていかなければなりません。これらの教訓を忘れて一から学び直すのは、人道的に許されることではないのです。

*編集部注:実際と異なり、映画『ハドソン川の奇跡』では機長らが事故調査委員会から厳しい取り調べを受ける様子が描写されています。

マシュー・サイド:コラムニスト、ライター

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください