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宇都宮ライトレール、その人気で露呈した"欠陥" 何の対応もせず放置すると評価は下がり続ける

東洋経済オンライン / 2024年1月16日 6時30分

2006年に開業し「わが国初の本格的なLRT」と言われた富山ライトレールも、旧来の運賃収受方式のためにダイヤが乱れ、鉄道線の国道踏切の遮断時間が長引いて国道が渋滞し、社会問題となった。対策として、IC乗車券に限って「セルフ乗車」を導入(宇都宮の方式と同じ)した。現金利用の場合は旧来の方式のままだったが車両が小型なためその弊害は小さく、大きなダイヤ乱れは解消した。しかし、利便性の問題は残った。

旧来方式の欠点は富山で顕在化していたが、宇都宮はその轍を踏んだ。宇都宮市は市民を対象に「富山ライトレール体験見学会」を2017~2021年に開催、参加者の意見・感想を市のホームページで公表した。その中に、「ICカード利用者以外の人(筆者注。現金利用者)の降車時に少し検討があっても良いのでは(とくに混雑時)」、「(現金利用者は)下車時、ワンマンの為1カ所の出口になっている。宇都宮でもワンマンでさらに長い車両になった場合に不便とならない配慮が必要」との意見があった。旧来方式の欠点を正確に見抜いていた。この懸念は的中し、開業した途端にダイヤが乱れた。市は、この市民の意見をどのように判断したのだろうか。

今までわが国でLRTの導入がはかどらなかったのは、財源と軌道法(車両長30m、速度時速40km)にあると言われてきた。しかし、助成制度が創設されて財源問題は解消した。速度については、諸外国では道路との併用軌道でも時速50~60kmだが、自動車や人との衝突事故の回避を強力な非常ブレーキで担保している。外国の設計・製造がルーツの宇都宮の車両もこのブレーキを装備している。しかし、わが国では急ブレーキ時の乗客の車内転倒事故防止を優先して、このブレーキは使用しない。したがって、併用軌道区間の速度向上は容易ではない。

現行法でも新設軌道区間は保安設備を整えれば時速40kmを超えることができる。現に阪堺電気軌道は時速50kmであり、西鉄北九州線は時速60kmだった。宇都宮は路線長の約36%が新設軌道であり、新幹線並みの立派な高架線もある。にもかかわらず時速40kmではいかにも低速だ。新設軌道を「道路のない市道と認定」して併用軌道の扱いにしたためである。助成金取得の面では有利だったのだろうが、速達性、つまり、利便性が犠牲になっている。

利便性を向上させるためには

「交通未来都市うつのみや」を目指すなら、その主軸となる利便性の向上、つまり、利用者へのより良い輸送サービスの提供を第1とすべきだ。「1日乗車券はすべてのドアから乗り降り可能で快適」とPRしているということは、旧来の方式の運賃収受は不便と認めていることにほかならない。こうした認識があるのなら、不便な旧来の方式の運賃収受は即刻取りやめるべきだ。

改善された路面電車がLRTと呼ばれてから半世紀以上が経ち、LRTに関するノウハウは諸外国にたくさんある。このノウハウを勉強して謙虚に採り入れるとともに、国内法規を最大限活用してLRT本来の機能と利便性を備えるべきだ。

柚原 誠:技術士(機械部門)

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