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中国・恒大系「EVメーカー」、トップの身柄拘束の闇 犯罪関与の疑い、金融子会社の不祥事に連座か

東洋経済オンライン / 2024年1月17日 12時15分

当局に身柄を拘束された劉永灼氏は、かつて恒大集団の金融子会社の責任者を務めていた。写真は恒大汽車のイベントでスピーチする劉氏(恒大集団のウェブサイトより)

中国の新興EV(電気自動車)メーカーの恒大汽車(正式社名は恒大新能源汽車集団)は1月8日、経営トップで副董事長兼総裁(副会長兼社長)を務める劉永灼氏が犯罪に関与した疑いで身柄を拘束されたと発表した。

【写真】恒大集団は、不動産事業の資金繰り悪化を補うために金融子会社を利用していた。写真は建設途中の恒大集団のマンション群

同社は深刻な経営危機に陥っている不動産大手、恒大集団(エバーグランデ)の子会社で、劉氏は恒大集団の常務副総裁(副社長)も兼務していた。恒大集団では、2023年9月に創業者の許家印氏が当局の「強制措置」を受けるなど、グループ幹部の拘束が相次いでいる。

劉氏が公の場で最後に目撃されたのは、2023年12月26日、恒大汽車の天津工場で開催された「恒馳(ヘンチー)5」の納車セレモニーのときだった。恒馳5は恒大汽車が量産にこぎつけた唯一の車種だが、同社の情報開示によれば、2023年1月から6月までの販売台数は760台にすぎない。

事業多角化に深く関与

現在43歳の劉氏は、恒大集団の古参幹部の1人だ。2003年に入社後、当初は人事畑を歩み、その後は恒大集団の事業多角化に深く関与。多数の子会社の要職を歴任し、対外的にはプロサッカーチーム「広州恒大フットボールクラブ」の経営トップとしての知名度が高かった。

そんな劉氏が、2016年から2018年にかけて金融サービス子会社「恒大金服」の責任者を務めていたことはあまり知られていない。当時はP2P(ピア・ツー・ピア)と呼ばれるインターネットを介した個人間金融ビジネスの全盛期で、恒大金服は不動産関連に特化したP2P金融サービスを手がけていた。

親会社の恒大集団にとって、恒大金服の役割は個人の貸し手から集めた金を自社の資金ニーズに利用することにあった。

「2018年以前の恒大金服は、恒大集団の開発用地の購入費や建設資材の購入費、建設工事費などの支払いを(恒大金服の金融商品につけ替えることで)先延ばしにするのが主な仕事だった」。財新記者の取材に応じた恒大金服の元社員は、そう証言する。

だが2018年に入ると、中国各地のP2P金融サービス会社で(経営破綻や資金の不正流用などの)不祥事が噴出。中国政府の金融監督当局が全面的な業務是正に乗り出した。その結果、恒大金服は提供するサービスのほとんどが販売停止に追い込まれたが、2019年5月末に社名を「恒大財富」に変更し、理財商品(高利回りの資産運用商品)の販売を続けた。

集めた資金を不正流用

「社名変更の前後で最も大きく変わったのは、資金調達の目的だ。恒大財富になってからは、(見た目は無関係の)別会社を経由して当局の監督の目を逃れ、恒大集団の地域別の不動産事業子会社に金を回していた」(前出の元社員)

しかし2021年9月8日、恒大財富は満期を迎えた理財商品の償還資金の確保に窮し、元本払い戻しの延期を発表。数十万人の個人投資家が債務不履行のリスクに巻き込まれた。

広東省深圳市の公安当局は、恒大財富が違法な資金集めに手を染めていたと見て捜査している。ただし、今回の劉氏の身柄拘束が恒大財富の違法行為にかかわるものであるかどうかは、現時点では定かではない。

(財新記者:戚展寧、陳博)
※原文の配信は1月8日

財新 Biz&Tech

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