1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 7時20分

1月16日、中国共産党の金融に関する勉強会で演説する習近平国家主席。金融リスクへの現状認識は「戒厳令」を思わせる厳しさに(写真:新華社/アフロ)

不動産不況の長期化やデフレ傾向が懸念された2023年の中国経済。その総仕上げとなるGDP(国内総生産)統計が1月17日の午前11時(日本時間)に公表された。最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった。2024年に政府が景気対策にどれだけ踏み込むかの判断材料になるからだ。

【図表】中国の成長率目標「5%前後」達成には上海ロックダウンの反動増が貢献

発表前日に統計データをポロリ

ところが、発表前日に思わぬ「フライング」があった。スイスのダボス会議で、李強首相が「中国経済は全般的に回復・改善し、2023年の成長率は5.2%前後になる」とあっさり明かしてしまったのだ。

統計数字の事前流出が望ましくないのは中国でも同じだ。2011年には、国家統計局の官僚が発表前の統計データを漏洩した疑いで取り調べを受けたことが報じられている。「目標は達成できる見通し」とほのめかす程度ならともかく、国家指導者が数字そのものを事前に明かすのは異例だ。

それだけ「超過達成」をアピールしたかったのだと思われる。李首相は大規模な景気刺激策に頼ることなく目標を達成したことを強調し、中国経済は「着実な進歩」を遂げているとした。今後の方向性については「高質量(質の高い)」成長を目指すという。「高質量」は習近平国家主席が最近強調している経済政策のキーワードだ。

李首相は、ダボス会議に集まった世界の経営者に向かって対外開放政策の継続を約束した。そのうえで、「過去5年間、対中直接投資の収益率は約9%だった。これは国際的にも比較的高い水準にある。中国市場を選択することはリスクではなく、チャンスだ」と強調してみせた。

理由としては、中国の市場の潜在力の高さがあるという。李首相は「中国の中所得層は現在4億人であり、今後10年程度でその数は2倍の8億人になる」「中国の都市化率はまだ先進国の平均より10ポイント以上低い。また、3億人近い農民工が市民権を得るプロセスを加速させており、住宅、教育、医療などに大きな需要をもたらす」などと好材料を列挙してみせた。

中所得層の拡大も都市化率の向上も、中国政府の「営業トーク」の定番だ。いま中国は海外からの投資を切実に求めている。中国の対内直接投資は2023年7~9月期に統計開始以来初めてマイナスを記録した。李首相としては、成長率の「目標達成」を手がかりに中国経済への期待値を上げたいという思惑があったのだろう。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください