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ヴィレヴァンが知らぬ間にマズいことになってた 「遊べる本屋」はなぜ魅力を失ってしまったのか

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 18時30分

やや率直な表現になってしまい恐縮だが、ヴィレヴァンの店舗には「こういうカルチャーを知っておくべきだ!」というような、「押し付けがましさ」が感じられてしまう。なんだろう、この感じ……と思いながら、創業者の回想を読んでいると、腑に落ちる記述があった。彼が初期の社員たちに語った言葉である。

「本というのは特別な消費財なんだ。まず、本を売ることに矜持を持とう。コンビニで本を買うようなセンスの悪い奴は相手にするな」(菊地敬一『ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を』、p.50)

言い方がやや厳しいかもしれないが、ヴィレヴァンにはどことなく「選民意識」みたいなものが流れているのだ。それは「センスの悪い奴を相手にするな」という言葉によく現れている。

で、こういうある種の「押し付けがましさ」は店から出される「圧」といえるとも思うが、それはヴィレヴァンの店舗空間にもよく現れている。そこには「余白」がないのだ。

店内空間にはぎっしりと物が詰まっていて、その「ブツのパワー」みたいなものに人は圧倒される。ヴィレヴァン側が持つ、「こういうカルチャーこそいいんだ!」観が迫ってくる。

こういう手法は、たぶん引っかかる人には引っかかっていたと思う。でも、残念なことに時代の消費のトレンドを見ていくと、こうした「押し付けがましさ」は不利に働いてしまう。

Z世代の企画屋として知られる今瀧健登が書いた『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』の中に興味深い話がある。近年、商品やサービスを売るときに、それらがいかに優れているのかをアピールしても、あまり意味がないという。消費者の嗜好は多様化していて、その商品について、企業側の一方的な押し付けがましいアピールは消費者にとって望ましく思われないことがあるというのだ。

今瀧は、消費者一人一人にとって、その商品に対する解釈(この商品をどうやって使ったら楽しいか、この商品をどのように使いたいか)ができるような余白のある製品宣伝が望ましいという。

広告だけではなく、空間作りにおいても同様だろう。そのように、多様な解釈を消費者に感じさせられる空間は、余白のある空間だと思う。ヴィレヴァンは店側の意図があふれすぎていて、少し暑苦しくなってしまっている。その熱量が、裏目に出ているのだ。

ヴィレヴァンとドンキの明暗を分けたもの

以上、ヴィレヴァンの空間戦略が低調である理由を2つのポイントから考えてきた。この2つのうち、1つ目はもはや時代の流れであるから仕方のない面があるものの、2つ目については、他の企業を分析する際にも有用な視点を、私たちに提供してくれる。

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