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松本人志氏の活動休止で一般企業が学ぶべきこと 即座に「事実無根」と強く否定することの是非

東洋経済オンライン / 2024年1月19日 12時10分

日本企業は従業員を大切にするので、②が多いかもしれません。ただ、誠実な従業員でも、魔が差すことはあります。経営者が従業員を信じるのは大切ですが、危機管理は性悪説に立つべきです。「早急に事実確認し、〇週間をメドに調査結果を公表します」とするのが適切でしょう。

ご法度なのが、③です。以前なら、社内の出来事はあまり表沙汰になりませんでしたが、いまは社内のあることもないこともSNSに晒されます。「どうせバレないだろう」と考えて傷口を広げるのが、最悪のシナリオです。誠意を持って謝罪し、今後の対策を約束するのが妥当です。

もちろん、今回の吉本興業・ホリプロコムが3つのどれに該当するかは現時点ではわかりません。ただ、いかなる場合でも、条件反射的に「事実無根」と表明するのは、クライシスコミュニケーションとして不適切なのです。

今回の件は芸能界で起きたことですが、一般企業においても他人事として片づけられることではありません。

#Me Too運動が盛り上がりを見せたように、性被害に遭っても声を上げられず、泣き寝入りしている女性が多いと言われます。一方、痴漢やセクハラの冤罪事件が後を絶たず、多くの男性も「女性に訴えられたらその時点でアウト」と怯えています。男女関係なく、多くの国民にとって今回の件は切実な問題です。

企業でも、セクハラやパワハラの告発に対し、「ちっちゃなことでガタガタ言うな」「昔と比べたら随分とマシ」といまだに取り合わないことがあります。事態を放置し、さらに傷口が広がってしまうことも珍しくありません。

声が上がったら、自分の価値基準で「くだらない」と切り捨てるのではなく、まず相手の話に耳を傾けるようにしたいものです。

争点を明確にして議論する

また、相手の訴えを聞いて議論のテーマとして取り上げても、感情的な主張の言いっぱなしではいけません。争点を明確にし、建設的な意見交換をし、問題を解決する必要があります。

今回の件を例に取ると、もし松本氏が女性を相手取って、「同意があったのに、強要されたと嘘をついている」と訴えるなら、性加害の有無が最大の争点です。

しかし、松本氏は、女性ではなく『週刊文春』を訴えるようです。『週刊文春』は「性加害を告発している女性がいる」と記事で紹介しているので、争点になるのは「『週刊文春』が女性からの告発を捏造したのか」「(性加害がなかった場合)女性の告発が虚偽だと知りながら記事で取り上げたのか」の2つになるでしょう。

現在ネット掲示板やSNSでは、「松本氏による性被害があったのか?」という点を巡っていろいろな意見が飛び交っていますが、争点としてはピントがずれていると言えます。

企業でも、本筋から離れたこと、重要性が低いこと、解決不可能なことを延々と議論し続けたりします。議論の途中で、「いま議論していることは、本当に大切な争点なのか?」と振り返るようにしたいものです。

今回の件をきっかけに、日本企業の危機管理のあり方や議論の進め方が大きくレベルアップすることを期待しましょう。

日沖 健:経営コンサルタント

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