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「退避経路は断絶?」台湾有事シナリオの盲点 通信が途絶え、現地での機微情報の接収リスクも

東洋経済オンライン / 2024年1月19日 11時40分

なお、現実には不測の事態も起こりうるため、シナリオ分析において、専門家に対しても正確な予測を求めることはできない。そのことを念頭においたうえで、提示されたシナリオの中から、シミュレーションを実施すべきであるのは言うまでもない。

このようなシナリオ分析に対し、多くの企業担当者は沈痛な面持ちで「想定できていない事項があまりにも多い」という反応を示す。

シナリオ分析から見える対応の難しさ

仮に武力衝突を伴うシナリオを想定した場合、サイバー攻撃、通信の遮断、移動手段の麻痺など有事のフェーズに応じ多くの事象が想定される。企業としては、現地駐在社員の退避、海上封鎖に伴う供給網の寸断、対中金融制裁による決済の滞り、現地での施設接収など多くのリスクが想定される。

まず検討されるのは“ヒト”の安全だろう。

中国や台湾の現地駐在員をどのタイミングで退避させるべきだろうか。有事に突入し、通信が途絶えた状態で、はたして日本本社から指示が出せるだろうか。

企業は通信が途絶えることを想定し、その場合には、現地で判断をさせるべく退避マニュアルは備え付けられているべきだろう。ただ、それが中国人社員を通じて当局に知られた場合、中国人社員の反発とともに、当局による圧力などのリスクが伴う。

となると、退避マニュアルは、それを運用する責任者とごく一部の日本人社員にのみ理解させ、有事の際にはそのメンバーが退避に向けた実働部隊となるような手法が想定される。そのような場合、責任者は日本人である必要があるが、そのような人事配置になっているだろうか。

そもそも、有事に突入すれば、社員の退避は極めて困難だ。まず、台湾は、周辺を海で囲われており、陸路で退避するすべがない。

現地に滞在せざるをえないケースも

2022年8月にペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問した際、中国は大規模な軍事演習を行ったが、この時には韓国の主要航空会社であるアシアナ航空や大韓航空は運航を停止した。これが緊張状態ではなく、“有事”となれば、無期限で運航を停止するだろう。台湾有事となれば、ANAやJALは当然ながら、日本と台湾を結ぶ航空機の運航は停止となる。

すると、退避のタイミングを逸すれば現地に長期間滞在しなければならず、現地法人や関連施設において食料などの備蓄が十分確保できているか改めて確認すべきである。

さらに、台湾有事の際は偽情報が飛び交う。偽情報に惑わされず現地からの退避を完遂させために、一定の水準を超えるような軍事的緊張が高まった際に退避を実施する一足早い行動が必要だ。そのきめ細かな指針や退避を実行させるトリガーの設定は準備されておくべきである。

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