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本当にできる?小田急多摩線「相模原延伸」の現状 採算性に課題、2027年度までは動きなしか

東洋経済オンライン / 2024年1月19日 6時30分

延伸計画に弾みがつくきっかけとなったのは「在日米軍再編」だ。2006年、日米両政府は相模原駅の北側に広がるアメリカ軍相模総合補給廠の敷地の一部を日本に返還することで基本合意。これによってJR相模原駅付近に新たな駅を設ける場所の確保にメドがつき、相模原市と町田市などは延伸についての調査検討を進めた。2014年には敷地の一部が返還された。

関係者会議が2019年にまとめた報告書では、延伸区間は唐木田から町田市内の中間駅と相模原駅を経て上溝駅に至る約8.8km。インフラの整備は公的主体、列車運行などの営業は小田急が行う上下分離方式を想定している。

延伸で期待される効果は都心への所要時間短縮だ。報告書によると、現在はJR横浜線と小田急線を乗り継いで朝ラッシュ時に約1時間を要する相模原―新宿間は直通48分に、JR相模線と京王相模原線を乗り継ぐ上溝―新宿間は1時間13分から直通51分に短縮されると試算している。また、町田市内の中間駅として想定している小山田付近から新宿方面へ行く場合、現在はバスで約30分かけて町田駅に出る必要があるが、延伸が実現すれば新宿まで46分となると予測している。

課題は採算性だ。試算によると、唐木田―上溝間の概算建設費は1300億円。輸送人員は1日当たり7万3300人で、1を超えると事業の効果があるとされる費用対効果(B/C)は開業後30年間で1.2だが、累積資金収支の黒字転換には42年かかると予測された。建設費は整備主体が国と地方自治体から3分の2の補助を受ける「都市鉄道利便増進事業」の制度を活用する想定だが、これを適用できるのは30年間での黒字転換が目安といい、条件を満たさない。

2019年「報告書公表」から何が進んだ?

一方、まず唐木田―相模原間を先に整備した場合の概算建設費は870億円で、26年で黒字転換可能と試算された。この内容を受け、相模原市の本村賢太郎市長は報告書の公表時、同区間の先行整備を目指すとの方針を示した。

報告書の公表後、「事業化に向けたさらなる検討を行っていく」とされた延伸計画。だが、2019年以降、目立った動きは見られない。

相模原市交通政策課の担当者は、「収支採算性などについて関係機関と連携して調査検討は進めているが、公表できるような内容はない」といい、具体的な進展はないのが現状だ。整備区間についても、唐木田―上溝間の一括開業と、相模原までの先行開業の両方を「並列で調査検討している」といい、報告書公表前の段階と変わっていないといえる。

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