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紫式部が友達の人生相談に送る「心が晴れる言葉」 遠方に行くか悩む友達に、どうアドバイス?

東洋経済オンライン / 2024年1月20日 12時30分

「遠山里」というのは、その女友達がいる山里のことを指します。式部は「激しい風が吹きつける山里の紅葉は、少しでも止まっていることは難しいでしょう」と詠みます。

山里の紅葉は、女友達のことを指しているのですが「あなたが、ついて行かずにとどまっていることなどないでしょう」と言っているのです。式部と友達がどれだけ深い仲かはわかりませんが、友達の性格というものを式部はよく理解していたと思われます。

理解したうえで、実は答えはもう出ているのではないですかと、暗に友達の「決断」を後押ししているようにも思うのです。

例えば、好きな人に告白することをその本人は悩んだ末にもう決めているのに「どうしよう。あの人に告白しようか、どうしようか」と友達に相談したことはありませんか?

相談する人の気持ちは、友達に自分の気持ちを後押ししてほしいものだと思うのです。式部の友達の気持ちもそれと同じようなものだと私は感じます。

そして、式部はそれを鋭敏に察知し「あなたが、ついていかずにとどまっていることなどないでしょう」と返したのではないでしょうか。

その式部の返しに、友達は「もみぢばを誘う嵐ははやけれど木のしたならでゆく心かは」と応答しています。紅葉の葉を誘う嵐というのは、夫の「ついてきてほしい」という激しい感情を表しています。

「木の下」というのは、友達の親元を指していると思われます。女友達は「あの人は一緒に行こうと激しく誘ってきます。でも、親元を離れて行くものですから」と返歌を寄越したのです。それに対する式部の返歌はありません。おそらく、返歌しなかったのでしょう。

的確なアドバイスをくれる紫式部

それはおそらく、女友達の「悩み」が解消されたからだと推測されます。式部の想像通り、女友達は夫について、遠国に行ったと思われます。式部は冷静に人の感情を読み取り、人生相談に対しても、的確な回答を歌に託しています。

きっぱりした性格だと言えるでしょうし、だからこそ、友達も式部に悩む気持ちを打ち明けたのではないでしょうか。「あの人ならば、何かよい回答をくれるに違いない」と。


(主要参考文献一覧)
・清水好子『紫式部』(岩波書店、1973)
・今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985)
・紫式部著、山本淳子翻訳『紫式部日記』(角川学芸出版、2010)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)

濱田 浩一郎:歴史学者、作家、評論家

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