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沖縄「米軍基地」用地が競売にかけられる驚愕実態 「軍用地バブル」に生じた在庫過多の異変

東洋経済オンライン / 2024年1月21日 7時50分

この9筆で最も低かったのは「約52倍」(同1.9%)だった。軍用地はネットにも数多くの売却情報が出ているが、52倍から60倍の売却希望価格がついており、ほぼ相場に近い価格で売れたと見ることができる。

軍用地の相場は基地によって違う。基地の立地や、地元に返還される見通しなどが違うためとされる。

軍用地の競売が2023年に急増した理由

昨年3月の競売では、嘉手納飛行場の北側にある「嘉手納弾薬庫地区」に同じ不動産業者が持っていた3筆もかけられた。

約51倍で落札した大阪府の男性(40)は、「競売は不動産業者に支払う手数料がかからないので、その分は安く入手できると考えて相場程度の価格にした」と話した。この入札には12者が入札した。

競売は「たたき売り」のように言われることもある。しかし、少なくとも軍用地の場合、透明性が高く、現地を見なくても入札しやすいこともあって一般の相場と変わらない価格がつくようだ。

実は、軍用地の競売は2023年に急増した。9月までに計25件の競売があったが、2021~2022年は1件ずつで、その前は2012年までさかのぼらないと見つからない。

その背景には、金利の急激な変化がある。

米軍基地関連で働く女性(60)は、2008年のリーマンショックで投資してきた株が暴落したことを機に軍用地投資を始めた。初めて買ったのは那覇空港の敷地だった。

那覇空港は戦後も米空軍などが使い、本土復帰後の1975年に返還された。日本の公共飛行場は原則国有地だが、那覇空港の5分の1は民有地で、国が借り上げている。こうして、米軍基地の土地と同様に、軍用地に準じる扱いで売買されている。

2009年に女性が買ったのは年間賃料が約33万円入る83㎡で、保有していた株などを売却した約1200万円を充てた。「36倍」(年利約2.8%)だった。那覇空港は返還されることが考えにくいこともあって、投資家の人気が高いとされる。最近は60~65倍程度で売り出されている。倍近くに値上がりしたことになる。

「異次元緩和」で軍用地価格が上昇

このほか、女性は2011年に浦添市の「牧港補給地区」の土地約264㎡を「33倍」(同3.0%)で、2018年に読谷村の「トリイ通信施設」(約250㎡)を「47倍」(同2.1%)、2020年には北谷町の「キャンプ瑞慶覧」(約280㎡)を「45倍」(同2.2%)で買った。

女性が軍用地を買い増したタイミングは「アベノミクス」と重なる。2012年末に政権に復帰した自民党の安倍政権に呼応し、日銀の黒田東彦総裁(当時)が打ち出した「異次元緩和」で長期金利が大幅に低下。軍用地の利回りが有利に見えるようになり、価格は上昇した。

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