1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

中国「融資平台」のオフショア起債に当局が待った 債務利払いの原資を割高コストで調達する矛盾

東洋経済オンライン / 2024年1月24日 18時0分

地方政府傘下の融資平台の多くは収益性の低いインフラ建設などに巨額の投資を行い、資金繰りが悪化している(写真はイメージ)

「融資平台」と呼ばれる中国の地方政府傘下の投資会社は、厳しい資金繰りを乗り切るための新たな手法として、オフショア市場での起債を増やしてきた。ところが、この動きを金融監督当局が問題視し、融資平台の外債発行登録申請を受理せず、起債手続きが滞っていることが財新記者の取材で明らかになった。

【写真】融資平台が発行する外債は主に香港やマカオで起債されている

当局が待ったをかけたのは、融資平台と中国国内の債券投資家があらかじめ申し合わせ、投資家がTRS(トータル・リターン・スワップ、原資から生ずる損益と金利を交換する契約)やQDII(適格国内機関投資家)などの手段を通じて国内資金をオフショアに持ち出し、融資平台が発行する高利回りの外債を購入するスキームだ。

表面金利8%の事例も

この手法で発行される外債は、償還期間が1年または3年で、主に香港やマカオで起債されている。一部の融資平台は、(会計年度の節目である)年末が近づくと債務の元利返済の圧力が高まり、相対的に発行が容易な1年物の外債をつなぎ資金の調達手段にしたのだ。

だが、融資平台はその対価として、国内市場よりも割高な利回りや引き受け資金の国外持ち出しにかかる手数料など、追加のコストを負担しなければならない。

中国の金融情報サービス会社、Windのデータによれば、山東省の融資平台の1つである威海南海投資発展が2023年12月29日に発行した総額3億1000万元(約63億円)の債券は、表面金利が8%に上った。

中国の中央政府は目下、地方政府の債務を包括的に整理し、新たな債券に「リパッケージ」する計画を進めている。地方財政の急激な悪化や資金調達ルートの目詰まりに直面する融資平台にとって、実質的な元本返済の繰り延べや金利負担の引き下げが期待できる政策だ。

だが、融資平台は既存債務の利払いという目の前の課題を抱えており、債務のリパッケージ化を待っている余裕がない。それゆえに、割高なコストを負担してまでオフショア市場での起債に走ったのだ。

各地の融資平台による外債の発行状況を見ると、山東省の融資平台の発行件数が最も多く、2023年8月以降だけで50本を超える。江蘇省、四川省、浙江省の融資平台も、それぞれ10本を超える外債を発行した。

コストは国内起債の約2倍

「金融監督当局は先日、融資平台に対して新たな資金調達を認めないと改めて強調した。外債を発行したくても登録申請を受け付けてもらえない状況だ」。山東省のある融資平台の資金調達担当者は、財新記者の取材に対してそう証言した。

当局はなぜ、融資平台の外債発行を問題視するのか。その根拠の1つは、融資平台の役割は(中国国内の)地方のインフラ建設などへの投資であり、海外事業とは本来無縁であることだ。

中国国内の債券市場では、新規起債の金利は4%を切る水準に低下している。そんななか、オフショア市場で約2倍のコストを払ってつなぎ資金を確保するのは、(本質的な問題解決を先送りするための)その場しのぎに過ぎないと言える。

(財新記者:丁鋒)
※原文の配信は1月5日

財新 Biz&Tech

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください