「世界の船の3割が通る」紅海で攻撃が続く影響度 日本郵船など国内海運大手もルート変更で回避
東洋経済オンライン / 2024年1月24日 7時20分
「喜望峰を迂回すると欧州航路ではループ(1往復)で2隻程度の船の追加が必要になる」(松田氏)。問題が長期化すれば、リードタイムや輸送コストへの影響が懸念されるという。
ただし、日本関連の海上輸送で考えると、原油などは紅海を経由して運んでおらず影響は限定的との見方もある。「コンテナ船でも新規竣工が進んでおり、中国の春節前の輸送ラッシュなど短期の問題を切り抜けられれば、市況への影響は限られるのではないか」。松田氏もそう語る。
コンテナ輸送などの費用が最終商品の価格に占める割合は数パーセント程度のものが多く、仮に急騰してもコスト面の影響は限定的とされる。いきなり商品価格が倍になるなどの影響は短期ではなさそうだ。
一方で不透明要因は、フーシ派による船舶攻撃がいつまで続くか、だ。
フーシ派はイエメン北部を拠点とするイスラム教シーア派系のザイド派の復興を志す武装組織だ。
2004年に蜂起し、2014年9月にはイエメンの首都サナアを占拠、2015年1月に実権を掌握している。その後、同年3月からのイエメン内戦への介入を開始したサウジアラビア主導の連合軍とも戦闘していた。
ガザでの戦闘の行方が今後を左右
フーシ派の軍事力はイエメン内戦以降、急速に強化され兵員数は20万人を超えるという見方もある。日本エネルギー経済研究所・中東研究センターの副センター長である坂梨祥氏によると、「フーシ派はイスラエルによるガザ攻撃の停止に加え、イエメン国内でのプレゼンス強化を目指している」という。
これに対抗しているのが中東地域の海洋安全保障を担っているアメリカだ。フーシ派が攻撃する商船護衛を目的に米英を中心に行っている「繁栄の守護者」作戦では、「20カ国が参加を表明している」と発表している。判明しているだけでもアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、バーレーンなどが参加している。
一方のフーシ派の背後にはイランがいるとされる。1979年のイラン革命以降、「抑圧との闘い」と「アメリカへの対抗」を掲げ、アメリカとイスラエルを敵対視。イスラエルのガザ攻撃も強く非難している。
「フーシ派の船舶攻撃を停止させるには、イスラエルによるガザ攻撃の停止が有効」と坂梨氏は指摘する。今回の危機の主要因であるガザでの戦闘を平和的かつ速やかに終了させることができるのか。国際社会は難題を突きつけられている。
岸本 吉浩:東洋経済 記者
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