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またしても「人工地震説」なぜデマは"増殖"するか 全世界「選挙イヤー」に忍び寄る本質的な危険

東洋経済オンライン / 2024年1月27日 11時40分

能登半島地震で飛び交ったSNS上のデマの数々。メディアリテラシー教育などだけでは防ぎきれない「本質」を知っておくことが重要です(写真:AP/アフロ)

元日を襲った能登半島地震。倒壊した家屋に取り残された人々の救助や、被災した人々の避難生活、そうした中での盗難事件など、有事の日々が続いている。

SNSで飛び交った偽情報とデマ

一方SNS上では、被災者をかたった偽情報が拡散された。混乱に便乗したインプレッション(投稿の表示数)稼ぎが目的と思われる。岸田文雄首相が「悪質な虚偽情報は許されるものではない」「公共機関の情報を確認するなど虚偽情報に惑わされないように」と呼びかける事態にも発展した。

今回の地震が「人工地震」だと吹聴するとんでもないデマも飛び交った。すでに気象庁をはじめとする公的機関により否定されているが、一昨年の3月16日に福島県沖で発生した震度6強の地震(関東地方では東京都を中心に200万軒を超える停電などが起こった)でも同様のデマが流布した。その際、筆者は同種の陰謀論が関東大震災の時代から存在することを指摘した(人工地震を信じる人々が映す「陰謀論」深刻な浸透)。

能登半島地震の翌日である1月2日には、お隣・韓国で韓国最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が、刃物を持った60代の男性に首を刺される事件が発生。朝鮮日報は、「フェイスブックやインスタグラムなどには『割り箸に血のりを付けて演出したものだ』『李在明代表を刺したのは刃物ではなくスマホケース』などの投稿が多数掲載された」として、偽情報の拡散が深刻化している様子を伝えた(*1)。

昨年2023年は、対話型AI(人工知能)の「ChatGPT」の登場もあり、日本では「生成AI元年」と呼ばれる年となったが、今年はより巧妙なディープフェイクが随所で猛威を振るうことが懸念されている。フェイクニュースなどの偽情報が真に恐ろしいのは、仮に短時間であっても混乱を引き起こすことができ、仕掛ける側の目的が達せられてしまう点にある。

今回の地震では、本当に助けを求めている被災者に紛れて、インプレッション稼ぎのX(旧Twitter)アカウントが過去の津波動画などを用いて虚偽の投稿を行い、広告収益を狙ったことなどと推測されている。これらの投稿による直接的な被害は今回ほとんどなかったものの、つねにそれで済むとは限らない。海外からのSNSを介した影響工作の場合、その国の国民感情を推し量る好機になっているかもしれない。

フェイクニュースが政治に与える実際の影響

例えば昨年、ウクライナのゼレンスキー大統領が、アメリカからの援助金で豪華ヨットを購入したといううわさが、ロシア在住の元アメリカ海兵隊員が立ち上げたウェブサイトを通じて広がった。その詳細は、ゼレンスキー大統領の親しい友人が代理人になり、ヨット2隻に7500万ドル相当(約107億円)を支払ったという話だった。

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