「ニューイヤー駅伝」に創部2年で初出場の舞台裏 「富士山の銘水」チーム創設の陰に箱根の名将
東洋経済オンライン / 2024年1月28日 11時30分
陸上競技部は2022年4月に創部。そのきっかけをもたらしたのは、箱根駅伝で名を馳せた名将だった。
山梨で駅伝といえば、山梨学院大学の名が浮かぶ。同大学を箱根駅伝の強豪校に押し上げたのが、上田誠仁氏だ。
1985年に陸上競技部監督に就くと、無名だったチームを箱根駅伝に初出場させ、さらに3度の総合優勝に導いた。2019年に監督を退き、現在は山梨学院大学スポーツ科学部の教授になっている。
富士山の銘水とは、同大学出身の短距離の女子選手を社員として受け入れてもらったことから関わりが生まれたという。
「駅伝も強くしたいな」――。
ある時、富士山の銘水の粟井英朗社長がふともらした一言を、上田教授は聞き逃さなかった。「本気でお考えですか?」。
ほどなくして2021年10月、陸上競技部設立の起案書を会社に持参した。「山梨の地元に企業の陸上チームがあればいいなと思っていました」(上田教授)。
起案書は、自身がこれまで教え子を実業団チームに送り出す中で観察してきたことや、スポーツ経営学を研究する大学同僚の意見を基にまとめた。起案書の冒頭にまず記したのは運営の目的だ。上田教授は次のように語る。
「駅伝チームは企業によってさまざまな位置付けがあっていいと思いますが、地方の企業は大企業とは違います。富士山の湧水で企業活動をしているのだから、地元の方々に応援してもらって結びつきを強めていくことにつなげられると思いました」
企業スポーツは道楽とはいかない
目標とするニューイヤー駅伝出場までのロードマップも描いた。「企業経営ですから、スポーツは道楽というわけにはいきません。結果をシビアに判断されます」(上田教授)。
掲げたのは「5年でニューイヤー駅伝出場」。徐々に活動を加速させ、地元に支援の輪を広げて長続きする姿を描いた。
そして、監督として高嶋哲氏の起用を推した。起案書作成にも協力してくれた愛弟子だ。上田教授の監督時代に山梨学院大学の陸上競技部でマネージャーを務め、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科で修士の学位を取得。これまで監督として2つの陸上競技部をニューイヤー駅伝初出場に導いた経験を持つ。
富士山の銘水の陸上競技部は、高嶋監督と山梨学院大出身の選手2人で始動した。そこにほかの実業団や大学卒の選手が加わってゆき、駅伝のエントリー要員を超える14人まで増えた。そのうち大学時代に箱根駅伝を経験しているのは4人にすぎない。いわゆる「雑草軍団」だ。
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