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アイドルが断言「TikTokは冒頭0.1秒が勝負」の訳 八木沙季が教える「オチ」まで心をつかむ方法

東洋経済オンライン / 2024年1月30日 11時30分

アイドル、TikTokerの八木沙季。幼稚園時代からの相棒「うぱぎ」(右肩)と共に(撮影:梅谷秀司)

TikTokでフォロワー数70万人超(2024年1月現在)を獲得。身近な疑問を検証する「検証します!」動画で支持を集める八木沙季は、ソロアイドルとTikTokerの2つの顔を持つ。

インフルエンサーを目指す人も多い時代。50万人以上のフォロワー数を獲得するユーザーは上位1%と言われるTikTok界で盛大にバズったのは、彼女が“アイドルだから”ではない。

コロナ禍初の緊急事態宣言下での焦り、そして、それに端を発した「ひらめき」が人生の転機に。アイドルとしての活動がままならない時期になぜ、TikTokに活路を見出したのか。彼女ならではのショート動画のセオリーと共に聞いた。

ソロアイドルの一方「TikToker」として

30歳目前に故郷の兵庫県姫路市から上京し、八木沙季はソロアイドルに転向。芸能界で「売れたい」と願望を口にし、夢は「コンシェルジュのいるタワマン暮らしでタクシー生活」と潔く公言する。

【写真でわかる】「検証します!」で人気、アイドルの八木沙季さん、その素顔

関西時代、10代は吉本興業のつぼみ(現・つぼみ大革命)、姫路発のローカルアイドル・KRD8のメンバーとして活動。

20代の9年間は憧れのハロー!プロジェクトも系列会社に擁するアップフロント関西のLovelys(2023年3月解散)に所属していた。

その歩みは、当サイト掲載の記事『「検証します!」14年目"苦労人アイドル"驚く野望』で紹介した。

本稿ではもうひとつの顔、TikToker・八木沙季にフォーカスする。

彼女の代名詞となるのが「検証します!」動画。フォロワー数70万人超(2024年1月9日現在)を突破した今、先述のLovelys時代にTikTokへ賭けた背景、ショート動画へのこだわりを聞いた。

八木沙季は苦労人だ。アイドル14年目で上京するまでは、関西圏を中心に活動していた。

3組を渡り歩いたグループアイドル時代には、東京を中心にした首都圏との「ファン」や「仕事」の量的格差も実感。ふつふつと「売れたい」思いをたぎらせていた。

「ほぼセルフプロデュース」の経験が糧に

2組のグループを渡り歩き、20歳からはLovelysの一員に。

当初は4人組であったが、途中から解散までは、今なお“相方”と慕う宮崎梨緒と共にアイドルデュオとして2人で活動を続けた。

当時、ほぼ「セルフプロデュース」状態だったとは驚く。

ライブグッズも2人で考案して本番までに準備。衣装やグッズの制作では当時の事務所と「予算」を交渉し、衣装デザイナーや「小ロット」でグッズを商品化してくれる業者まで、2人で探していたという。

その一環であったライブの幕間映像やMVの制作は、TikTokでも精力的に活動を続ける現在の糧に。特技の「動画編集」は「独学」だった。

自分たちでやるしかない状況で映像の構成を考えて、撮影。動画編集はもちろん、事前のスタジオ手配もみずからこなす。

MVのイメージをふくらませて、他のYouTuberの動画を参考に。「楽しくて、どんどんのめり込んでいきました!」と、当時を思い出す口調は明るい。

なかでも当時、苦労したのは「ドキュメンタリー風」と解説するLovelysの曲『ドレドレ』のMVだ。

2人の打ち合わせやダンスレッスン、店頭でビラ配りする風景も記録、ステージまでの軌跡を描く作品で「イメージをスタッフさんに『こう撮ってほしい』と伝えるのが難しかった」と、振り返る。

その経験も糧に、今では動画編集のスキルを買われて他のアイドルグループのライブで使用する映像や、「TikTokでバズりたい」と願う友人の映像制作を引き受けることもあるという。

相手のために手がけた作品が「バズっていたり、ライブの映像が『よかった』とコメントをいただけるとうれしい」と噛み締めつつ、Lovelys時代を経て「みずから考える力、動画の編集力がついた」とほほ笑む。

2020年5月、八木沙季は焦っていた。

当時は、コロナ禍初の緊急事態宣言下で、日本全国が自粛を強いられていた時期。

むろん、アイドル界にも余波が押し寄せ、彼女もLovelysの一員として「ライブもできず、ファンのみなさんにも会えない状況」で「何かしないと」ともがいていた。

その一環として取り組んでいたのが、YouTube動画だった。しかし、張り切って「7〜8分の長尺動画」を編集しても、再生数は「100〜200ほど」とふるわず「けっこうキツいなぁ」と実感。

その後、打開策として、ふと「短い(尺の)動画を毎日アップできれば、ファンのみなさんも離れないかな」とひらめいたことが、くしくも「TikToker・八木沙季」の原点となった。

コミカルな「検証」フォーマットは変わらず

当初は「YouTubeっぽい動画をTikTokでも」と、気軽に考えてのアイデアだった。

1分の短尺であれば、長尺と比較して編集時間も短い。加えて、当時は「ダンス動画が流行っていた」ために差別化として、初めてアップしたのが「目を開けたままクシャミをすると目玉が飛び出るらしい」の「検証」動画だった。

@yagi_shaki 目を開けたままクシャミをすると目玉が飛び出るか検証 みんなもやってみて #くしゃみ #検証 #おすすめ #おすすめにのりたい ♬ オリジナル楽曲 - 八木沙季

フォーマットは今も変わらない。彼女の動画はユーザーへ疑問を提示して敬礼ポーズで「検証します!」と宣言するところからスタートし、コミカルに検証風景を見せるという簡潔な流れだ。

同様の動画をYouTubeでアップしても満足する再生数に満たなかったものの、TikTokでアップした途端に反響を集め「60万回以上」の再生数を獲得。

「コレや!」と直感したテーマがヒット、やがて彼女をフォロワー数70万人超のインフルエンサーへと押し上げた。

八木沙季の「検証します!」動画は、今や彼女の代名詞だ。

コロナ禍でひらめいたアイデアが原点となったが、バズったのはけっして偶然ではない。そう思えるのは、彼女自身によるショート動画のセオリーを聞いたからだ。

ユーザーを「最後のオチ」まで惹きつける

TikTokの動画は「最初で心をつかめるかどうか」による。日本で流行しはじめた当初は“開始3秒”の定説もささやかれたが、今は「開始0.1秒」と彼女は実感する。

そして、動画の構成にもこだわりがある。よく表れているのは、代名詞の「検証します!」動画と共に精力的にアップするダンス動画だ。

撮影時はやや引いた位置にカメラを設置、動画内では自身が踊る頭上に空間が生まれる画角を保つ。

空間に挿入するのは「過去にあった面白エピソード、失敗エピソード」のテキストだ。人が「瞬時に読めるスピードの文字数」も意識して、曲の終盤でエピソードの「オチ」を見せる。

@yagi_shaki 嘘ついてごめんなさい あ、荒野行動大好き民です #えなこダンス #荒野行動 #henceforth #踊ってみた とともに #テキストネタ #おすすめ #おすすめにのりたい ​♬​ オリジナル楽曲 - アート - __ke

ダンス動画をアップした当初は、メロディへたどり着くまでの前奏が長い曲で「何をしようか」と試行錯誤。

映像内の空間で「壁に貼った紙に何かを書いて踊り出し、最後にオチを見せる」という動画をアップしたところ再生数が伸び、ユーザーは「最後のオチが気になる動画が見たいんや」と気がついた。

地道な分析は、やがて「検証します!」動画のフォーマットにも繋がった。

とはいえ、いわば“あるあるネタ”には限界もありそうだが、コメントを介したユーザーからのアイデアもありネタのストックは「200近くある」と豪語。時折来る「ネタ切れ乙」のコメントにも動じず、その表情は明るい。

ソロアイドルとして「上半期女性タレントの出演数ランキング」で上位に入るほど「売れたい」と口にする一方、フォロワー数70万人超を抱えるTikTokでもいまだ貪欲だ。

30歳となった現在では「100万人以上に支持される10代の子」にかなわないと、危機感も募らせる。

それでも、フォロワー数50万人以上のユーザーは上位1%とささやかれるTikTok界で、広く支持を集めたのは事実。

今なお重ねる努力で近い将来、誰もが知る“八木沙季”になる日を待ちわびてやまない。

カネコ シュウヘイ:編集者・ライター

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