"脱造船"で復活、三井E&S「クレーン事業」の凄み 港湾クレーンで世界シェア2位、脱炭素で受注増
東洋経済オンライン / 2024年1月30日 7時30分
「われわれはとくにコンテナ(ガントリー)クレーンが得意だ。通常2本のアームを1本にしたのが特徴で、軽量で風を受ける面積も減る。クレーンが大型化する中で有利だった」
そう話すのは、三井E&S成長事業推進事業部の市村欣也マーケティンググループ長だ。コンテナを吊り上げるクレーンの腕は通常2本だ。三井E&Sは20年以上前にこれを1本にすることに成功し、2001年にはマレーシアに納入している。
地上50メートルの操縦席で、強風も吹く中、約60メートルにおよぶアームを操作して10センチ程度の誤差でコンテナを積み卸しするのがクレーン操作の世界だ。軽い上に、風の影響が相対的に少ない構造は、発注者の埠頭運営会社から圧倒的な支持を得ることになる。
「単純にアームを1本にするのは他社でも可能だが、とくにヒンジ部(部材の継ぎ目)の設計がものすごく難しい。強度を上げようと思えば溶接を増やせばいいが、それをやると溶接部から割れてくる。溶接部分を少なくしながら所定の強度をいかに出すかがカギになる。内部構造、部材の材質、施工法に至るまで試行錯誤を繰り返して実現した」(市村氏)
こうした技術は、造船業から橋梁、クレーン事業に業容を拡大していく中で培われてきた。
旧三井造船は1917年に三井物産造船部として岡山県で発足し、日本初のディーゼルエンジン搭載の「赤城山丸」を建造するなど、造船業界で存在感を示した。
クレーン製造はすでに1930年代から始め、1960年代には当時世界最大の港湾クレーンメーカーであるアメリカのパセコ社(1988年に三井物産と共同で子会社化)と技術提携し、1967年に日本初のコンテナクレーンを神戸港に納入している。
「鉄板を扱う造船技術、橋梁製造の技術がとくに生きている。数をたくさんつくってきたことで、ノウハウが蓄積し、工場もクレーンに特化してライン化できている」と市村氏は言う。
港湾クレーンでは目下、運転作業員がより操作をしやすい仕組みの開発のほか、部品や交換点検などアフターサービスの強化に取り組んでいるという。
脱炭素に対応し、使用する軽油を半分以下に
一方、ディーゼルエンジンで動くトランスファークレーン(RTG)には脱炭素化の波が押し寄せる。
三井E&Sは2007年、ディーゼル発電機に加えてコンテナを巻き下げる際に発生する電気を回収して蓄電し、巻き上げる際の動力として使うハイブリッド式のクレーンを導入した。使用する軽油は1時間あたり10リットルと、従来型の半分になった。
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