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40代でバイク便から海外起業した彼の奇跡の秘話 英語を学んだことでまだ見ぬ世界への扉が開いた

東洋経済オンライン / 2024年2月5日 20時0分

海外で活躍するためには、まず言葉を覚えることが大切(写真:metamorworks/PIXTA)

低成長、円安、少子高齢化……今や何重苦も負っている日本で、未来への展望を抱けない人たちは多い。そんな中、投資家・シンガポール大教授として世界中を飛び回り、一流の人物たちとビジネスを動かしている田村耕太郎氏は、「日本人は海外で十分通用する」と語る。臆病で閉鎖的な状態から一歩踏み出すにはどうしたらいいのか。田村氏の著書『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』から、フィリピン・セブ島を拠点に活躍する藤岡頼光さんの体験談を、一部を抜粋・改編して紹介する。

バイク便のQQ便設立から、QQEnglishへ

藤岡頼光さんは、フィリピン・セブ島に拠点を置くフィリピン最大の英会話学校QQEnglishを経営。約1800人の教師を正規雇用し、年間6000人の語学留学生を受け入れ、オンラインでも4万人を超える生徒に授業を提供している。

1992年バイク便のQQ便設立後、2000年バイクショップのコネクティング・ロッドを設立。2005年フィリピン・セブ島に留学後、2009年にオンライン英会話事業のQQEnglish開始。2010年に留学事業も開始する。QQEnglishは現在、日本、フィリピン、中国、韓国、タイ、ベトナム、ブラジル、ロシア、モンゴル、中東で展開している。

彼の体験談を紹介しよう。

Q 海外に出られた一番大きなきっかけは何ですか?

英語を話せるようになり人生が大きく変わりました。

私は日本でバイク便という、英語と全く関係ない仕事をしていました。そして、バイクが大好きだったので、輸入バイクを売るお店も経営していたのです。輸入で出会ったイタリア人と趣味のバイクの話をしたくて、英語を勉強したのがきっかけでした。フィリピンのセブ島に来て英語を学び、英語が話せるようになり人生が変わったのです。

それまで、私の人生はバイクで始まりバイクで終わると思っていました。しかし、英語を話せるようになり、世界の扉を開けたら今まで見たことがない世界が広がっていたのです。

Q 今の場所でお仕事をされて、日本人でよかった、日本の社会を体験したからこそよかった、と思われる点はありますか?

2009年のことです。私がフィリピンでオンライン英会話とセブ島留学の学校を作ったとき、日系の英会話学校どころか、英語を学んでいる日本人が誰もいませんでした。韓国系の学校しかなく、生徒のほとんどが韓国人だったのです。日本人はネイティブ信仰が強いので、フィリピンに来て英語を学ぶという発想がなかったからだと思います。

私は日本人が誰もやっていないビジネスを見つけることができたので、オンライン英会話だけでなく、世界中から毎年6000人以上が学びに来るフィリピンで一番大きな英会話学校を作ることができました。

海外でビジネスをすると、一番のライバルは現地の人でも、アメリカ人でも、中国人でもなく日本人です。それは自分と同じ発想で経営しているからです。私が海外で成功できたのは、日本人なら誰でも持っている考え方で、学校を作ったからだと思います。

私はフィリピンのセブ島でビジネスをするまで、教育と全く関係ない仕事をしていました。MBAを持っているわけでも、大学で経済や経営を学んだわけでもありません。普通の高校を卒業して大学にも行かず、バイトでためたお金で好きなバイク関係の仕事をしていただけなのです。

私は何も新しいことをしませんでした。それまで安さを売りにした学校しかなかったので、高品質できめ細かいサービスを受けられる英会話学校を作っただけなのです。日本人なら誰でも考える当たり前のことをしただけでした。しかし、同じことをするライバルがいなかったのでフィリピンで成功することができたのです。

英語が話せるようになれば、世界で活躍できる

Q これから日本から出て世界を見たい人々に、今の場所のオススメ度・オススメのポイントは?

私は世界で活躍したいと思っている日本人が、第一歩を踏み出す最適な場所は、フィリピンだと思っています。

フィリピンは英語が公用語の国ですが、母国語はタガログ語です。フィリピン人は英語を勉強して話せるようになっています。毎年、ビジネス英語指数(BEI)が世界1位なので、世界で一番成功した英語の学習者と言えるのではないでしょうか。また、フィリピンは世界一の出稼ぎの国でもあります。国民の10%が海外で働き、GDPの10%が海外からの仕送りで支えられているのです。

すなわち、英語が話せるようになれば、世界で活躍できるということをフィリピン人が証明してくれています。

もちろんMBAを取り、いきなり海外で活躍できる人もいますが、大多数の日本人ができる方法ではありません。今英語が話せなくてもフィリピンで勉強すれば話せるようになります。初めて海外でビジネスを始める人にとっても、フィリピンは英語が使えるのでとてもやりやすい国です。

フィリピンを最終ゴールにすることはおすすめしませんが、志がある人がグローバル人材になり、世界に打って出るスタートの場所として考えれば、フィリピンが最高の国だと思います。

そして、少し付け加えるなら、海外で働くなら、フィリピン人より日本人の方が有利です。海外に出ると、英語を話せる同じ国の人が少ないので、競争相手がほとんどいないからです。日本の持っている文化や経験を、英語を使って表現さえできればチャンスがあります。

Q 逆に、海外でお仕事をされるうえで、日本人であること、日本の教育や社会を経ていることで足かせになっているようなことはありますか?

日本的なこだわりが海外でビジネスをするのに大きな武器になるのですが、日本の横並び教育がチャレンジ精神を妨げていると思います。すでにある物の品質を上げていくのは得意ですが、誰もやっていないことや、自分が理解できないことに抵抗があるのが、日本人の特徴です。

2009年に経験したことですが、私がフィリピンに英会話学校を作り、日本の留学エージェントさんへ営業に行ったときです。なんと企画書を投げ返されてしまいました。「何で日本人が発展途上のフィリピン人から英語を学ぶ必要があるんだ」「フィリピン人から英語を学んだらフィリピン訛りの英語になってしまう」と言われたのです。日本人が誰もやっていなかったのでフィリピン人から英語を学ぶということが理解できなかったのだと思います。

出る杭は打たれるではありませんが、新しいことに挑戦する人の足を引っ張るのが日本の特徴です。本来は誰もやっていないことや新しいことにチャンスがあるのです。

日本から近く、格安の料金でマンツーマンレッスンが受けられるフィリピンは、今では年間7万人もの日本人が来る、人気の留学先になっています。

英語を話せて海外に出ていく日本人は少ない

Q 海外から日本を見て、日本のポテンシャル/限界をどう評価しますか?

私のいるフィリピンは平均年齢が26歳で、人口ボーナスが2062年まで続くと言われています。それに引き換え平均年齢が47歳で人口が減少し、どんどん貧しく老いていく日本が心配です。今後、円安がさらに進んだら、どこからも相手にされない国になってしまうのではないでしょうか。

しかし、見方を変えると、今の日本の若者には可能性しかありません。これだけの文化とポテンシャルを持っているのに、英語を話せて海外に出ていく日本人が少ないのはチャンスです。国として考えると日本はノーフューチャーですが、個人で考えると大きな可能性があるのです。

何度も言いますが、海外でビジネスをするとき、最大のライバルは日本人です。その日本人が少ないのですから、これほど戦いやすいことはありません。

Q これから短期でも海外に出ていくとしたら、どの国のどこを見ることをオススメされますか?

フィリピンと言いたいところですが、どこでもいいと思っています。

しかし、旅行で数日間行くのでは何もわからないし、体験もできません。できれば知り合いがいる国にじっくり行ってみるのがいいと思います。実際に生活をしている人と一緒に滞在すると、旅行では見えないものが見えてきます。

私は仕事柄色々な国に行きますが、知り合いがいる国に行くのが一番面白く、学びが多くあります。有名な国でなくても、大都市でなくてもいいです。知り合いを訪ねて押しかけてみてください。

海外に住んでいると、日本から知り合いが来てくれるのはうれしいものです。忙しいのに行くと迷惑だとか考えがちですが、大丈夫です。大歓迎してくれます。

Q 今もし20代、30代の日本の若者に戻れるとしたら、どんな仕事を、どこ(国内・海外・宇宙でも)でやりますか?

1日でも早く海外に出て、日本人がまだやっていない仕事を探すと思います。

今まではアメリカで流行ったビジネスを日本に持ってくる、タイムマシン経営が成功していました。しかし、これからは日本の市場が縮小していくので海外に打って出るべきです。

私なら、日本で流行ったビジネスや、日本でやっている仕組みを、誰も知らない場所に持っていくタイムマシン経営をやってみたいです。

初めてビジネスをするなら、文化や考え方が近いアジアの発展途上国がいいと思います。私は英語を学び、英語が使えるフィリピンを選びましたが、英語以外を使っている国だと日本人がとても少ないのです。今からでもたくさんのチャンスがあるのではないでしょうか。

日本的な考え方でやるなら日本食や日本文化を発信するだけでなく、建築業でも、美容系の仕事でも、不動産業でも、なんでもいいと思います。

日本はアジアで唯一の先進国です。言い換えれば、日本だけがアジアで成功した経験を持っているのです。日本で成功しているビジネスだけでなく、日本で終わってしまったビジネスでも、これから始まるというアジアの発展途上国はたくさんあります。

言葉を覚えることは、歓迎につながる

Q 海外を目指す(留学・就職・移住)若者に具体的なアドバイスをお願いします。

まず言葉を覚えましょう。

世界中どこに行っても英語は通じますが、英語圏以外に行くならその国の言葉を覚えてください。そして、その国の文化を体験することです。食事もできるだけ現地のものを食べたほうが理解できます。私が実践しているのは、その地域の人しか食べない変わった食材や料理を喜んで食べることです。そうすると必ず親しくなります。

海外にいる日本人を見ていると、日本人とだけ付き合って、現地の人と接しない人が多くいます。海外に出てもグローバル人材とは言えません。皆さんが海外に出たら是非、現地の人と交わってもらいたいです。

そのためのアドバイスは、日本と違うことでも受け入れ、絶対に否定をしないことです。そして違いを見つけたら、なぜ違うのだろうと考え、もっといい方法があると思えば、それをビジネスにすればいいのです。

絶対に忘れてはいけないのは、どの国も自分の国ではないということです。普通に日本人が海外でビジネスをしたら、現地の人の仕事を奪うことになるので歓迎されません。「その国のためにならなければ受け入れてもらえない」ということを肝に銘じて、役に立つことを考えてください。

Q これからも日本にいて頑張るという人へアドバイス、あるいは警告は?

日本にいても、グローバル人材になってほしいと思います。

グローバル人材とは海外に出て働く人を指す言葉ではありません。日本人としてのアイデンティティをしっかりと持ち、異文化を理解しながら、豊かな語学力で積極的にコミュニケーションができる人です。日本にいて海外から来た人と仕事をしたり交流したりする人もグローバル人材なのです。

こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか

これから円安がドンドン進んで、日本にたくさんの外国人が来ることになると思います。そのとき、正しい日本の文化を伝え、日本のファンを増やしていくのも重要な仕事です。日本の中にとどまって、日本人としか接する機会のない人生だと、とても厳しい未来が待っています。たとえ日本に残るという選択をしてもグローバル人材になってください。

最後に私の話をします。

海外でビジネスをしているといいことばかりではありません。想定外の連続です。しかし、先の見えない中を全力で走っていると、無心にバイクのアクセルを開けていた時代を思い出します。初めて走る峠を全力で攻めながら、次のコーナーを曲がるとどうなっているのか? どんな景色が広がっているのか?とワクワクしながら走っている心境です。

パンデミックで留学生がゼロになったり、台風で校舎が大打撃を受けたりと、いろいろなことが起こりますが、楽しいツーリングが永久に続いているのです。私は40歳で世界の扉を開けました。もっと早く気がつけばよかったと思っています。

日本でもグローバル人材にはなれます。しかし、「君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか⁉」と言いたい。

田村 耕太郎:国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授、2024年一橋大学ビジネススクール客員教授

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