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専門家に聞く「炎上しない」個人情報の扱い方 情報法制研究所 高木浩光副理事長インタビュー

東洋経済オンライン / 2024年2月5日 7時10分

高木浩光(たかぎ・ひろみつ)/情報法制研究所(JILIS) 副理事長。1967年生まれ。94年名古屋工業大学大学院博士後期課程修了、博士。2016年に研究者らと政策提言団体「情報法制研究所」を設立。共著に『ニッポンの個人情報』(翔泳社)など(撮影:梅谷秀司)

データは金になる――。長い間そう言われてきたが、試行錯誤の末、ようやくビジネスが開花し始めた。

『週刊東洋経済』2月10日号の第1特集は「データ錬金術」。情報を金に換えるノウハウを先達から学ぼう。

──個人情報を扱ううえで気をつけるべきはどのような点ですか。

【図表】Yahoo!、リクナビ、東京医科大学… 個人情報関連で炎上した事案リスト

まず個人情報保護法に対する誤解がある。

「個人情報を保護する」法律と思いがちだが、個人情報の処理から個人を保護するもの。保護する対象は個人であって、情報そのものではないという点だ。

また個人情報というと、氏名、年齢、住所など個人の特定につながる情報だというのも誤解だ。法律の対象は、そうした一つひとつの情報ではなく、いくつかの情報が並んでその人を評価するために整理された「個人データ」全体であることに注意が必要だ。

データによる差別

最も大事なのは、「関連性の原則」だ。データが集められて個人の評価に使われるようになると、データによる差別が発生する。そうしたことから個人を保護するため、評価・決定の目的に直接関連する情報しかデータにしてはいけないというものだ。

──どういうケースが考えられますか。

例えばお金を借りる際に、過去の返済実績や資産の保有状況、そして仕事の状況といった、返済能力に直接関連性のある情報で評価するのは構わない。

しかし、動画の閲覧履歴などから「こんな動画を見ている人はお金を返さない確率が高い」といった分析がAI(人工知能)ではじき出されたとしても、返済能力とは直接関連性がないものに基づく評価・決定は統計的差別に当たるのだ。たとえ相関関係があるとしても許されない。

これは、日本の個人情報保護法が参考にしているOECD(経済協力開発機構)のプライバシーガイドラインの原則にもはっきりと書かれている。しかし日本ではそうした意識が薄い。

欧州などで問題となっているターゲティング広告も、関連性が問われている。購買履歴に基づいてその店の商品を紹介するのであればいいが、他店の購買履歴に基づいたものは関連性がないからだ。

──個人情報の議論では「本人同意」も問題になります。

個人の評価・決定に使わないのであれば、法律の趣旨からして問題とならない。代表的なものでいえば統計だ。例えば製品開発にデータを使う場合、既存の個人データを統計にして使用するのであれば、本人に関する決定に使うわけではない。だから同意なくデータを2次利用して構わない。

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