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サービスエリアに礼拝堂「イラン」の高速道路(2) カフェやレストランだけじゃない充実ぶり

東洋経済オンライン / 2024年2月8日 12時0分

比較的規模の大きなサービスエリアでは、食事を摂れるスポットが複数ある。ちょっとした軽食が食べられるカフェと、きちんとしたレストランが揃っているところも多い。

テヘランに戻る途中、残り1時間ほどの場所にあったコム近郊のサービスエリアは規模が大きく、たくさんある売店の中には、焼き菓子を製造する工房を備えたお店もあった。

レストランは、円形の池を囲むように建っており、「アーブ・グーシュト」と呼ばれる名物料理が提供された。

これはラム肉とジャガイモ、タマネギ、ヒヨコマメなどの野菜を、ディーズィーと呼ばれる小さめの壷に入れて長時間弱火で煮込んだ料理で、その具を専用のすりこぎのような道具で潰してナンにつけて食べる。野菜の味が強くねっとりした食感がお腹にたまる、おもしろい料理だった。

売店で売られているものもさまざまで、おもちゃや日用雑貨もあれば、靴や衣料品、化粧品などの生活必需品の店もある。一方で、伝統工芸品のような、旅のお土産になりそうなものもあった。

イランはナッツ類やドライフルーツの生産が多く輸出もされているが、ヒマワリの種、アーモンド、ピスタチオ、柑橘類やイチジクなどのドライフルーツの量り売りをしているコーナーも目についた。

クルマへの依存度が高いお国柄もあるのか、これまで見てきた多くの国のサービスエリアに比べて、店舗はバラエティに富んでいた印象だ。

イスラム圏の国ならでは特徴は、礼拝のための専用の部屋が設けられていることである。これは、これまで訪れたイスラム教国、例えばモロッコのサービスエリアなどでも見られたが、今回いくつか立ち寄ったサービスエリアには、モスクそのものが併設されているところも見られた。

イランはイスラム教の中でもシーア派が強く、人口のほぼ9割がシーア派の教徒である。もう1つの宗派で、他のイスラム諸国では主流となっているスンニ派では、1日に5回メッカの方角を向いて礼拝を行うが、イランのシーア派では多くが日の出前、昼、そして日没後の3回であるとガイドから説明された。

それでもイスラム教徒にとって礼拝は重要な儀式であり、空港や駅、ホテルなどにも必ずと言ってよいほど礼拝室が設けられている。サービスエリアに礼拝する場所があるのも、当然なのだ。

プジョーにルノー…、フランス車が多い

海外のサービスエリアでは、停車しているクルマのメーカーや車種の傾向を見るのも楽しみだが、イランで最も目立つのはフランスのプジョーである。ただし、これらは輸入車とは限らず、イランに3社ある自動車メーカーのうちの1社がプジョーのクルマを生産しているためだ。

他社もシトロエンやルノーなどとの関係が深く、それらの車種を生産しているため、全体としてフランス車の割合が高い。ちなみに、イスラム革命以前は日本車の走行も多かったようだが、トヨタ車やニッサン車を見かけたのは数えるほどであった。

イランは現在もアメリカによる経済制裁を受けており、スターバックスやマクドナルドの店舗を一切見かけないだけでなく、欧米系のクレジットカードもほぼ使えない。さらに、インターネットについても、X(旧Twitter)やFacebookなどアメリカ資本のSNSサービスだけでなく、LINEも接続できない状態にある。

こうした不便さはあるけれど、豊かな食材から生み出されるバラエティに富んだ料理に恵まれ、壮麗な遺跡や建築を眺めながらのイランの旅は、高速道路の走行も含めて大変、充実したものであった。

佐滝 剛弘:城西国際大学教授

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