ネットフリックス「大復活劇」の先で迎える正念場 プロレス配信「巨額契約」の裏でスト影響も?
東洋経済オンライン / 2024年2月9日 7時10分
順調な決算報告と合わせて、ネットフリックスはサプライズも用意していた。アメリカのプロレス団体「WWE」との独占配信契約の締結だ。
現地メディアによれば、10年間で50億ドル(約7400億円)にも及ぶ巨額契約となっている。2025年1月からネットフリックス上で、WWEの看板番組である「RAW(ロウ)」のほか、ドキュメンタリーなども全世界配信するという。
Amazonプライム・ビデオなどの競合が先行して注力してきたスポーツ配信の領域に、ネットフリックスもようやく本格参入することとなる。「WWE ロウの配信によって、ライブイベント番組の拡大というわれわれの願望をかなえられる。これは広告ビジネス拡大にも貢献するはずだ」。ネットフリックスのテッド・サランドス共同CEOはそう期待を寄せた。
業界内では、ネットフリックスのスポーツ配信への参入を“戦略転換”と受け止める向きもある。2023年4月の決算資料では、大手テック企業の間でスポーツ配信の競争が激化している点に触れつつ、「われわれはそうした競争にそれほどフォーカスしていない」とも記していたからだ。
ある業界関係者は「(イギリスのスポーツ専門配信サービス大手の)DAZNの値上げが進み、会員数が頭打ちになる中で、そこからの会員奪取を狙っているのではないか」と話す。
もっとも、このタイミングでスポーツ参入を決断した背景には、別の事情も見え隠れする。2023年にネットフリックスを悩ませ続けた、ハリウッドの脚本家や俳優らによるストライキの影響である。
脚本家の労働組合は2023年5月、賃金引き上げや動画配信における報酬の見直し、AI(人工知能)の使用制限などを求めてストライキに突入。7月からは俳優らでつくる労働組合も加わり、「同時スト」に発展した。
ネットフリックスの本社前でも大規模な運動が起こり、業界全体で映像作品の製作がストップする事態に陥った。結果的に9月末~11月上旬にかけて、脚本家と俳優それぞれの労使交渉が合意に達したことで映像製作は再開にこぎ着けた。ただ、製作が一時的に停止した影響により、2024年後半から新規作品の公開に遅れが出るとみられている。
仮に今後も同様の事態が再燃し、製作現場がたびたび混乱する状況に陥れば、オリジナルのドラマや映画作品によって差別化を図ってきたNetflixにとっては大きな痛手となる。その意味で、ストライキなどの影響を受けないスポーツ配信の強化は、事業の安定化を図る狙いもあるとみられる。
ストライキが後押しした姿勢の変化
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