バレンタインで「チョコ」食べる人が知らない真実 食べ物ではなく飲み物、しかも薬だった
東洋経済オンライン / 2024年2月13日 11時40分
もうすぐバレンタインデー。今では我々の生活に欠かせない存在となった「チョコ」ですが、さまざまな歴史や偶然の積み重ねのうえに、今の姿があります。
増田ユリヤさんの新著『チョコレートで読み解く世界史』より一部抜粋、再構成してお届けします。
ヨーロッパで最初にチョコレートを手にしたスペイン
ヨーロッパでいち早く、チョコレートを手にしたのは、言うまでもなくスペインです。マヤ文明やアステカ文明の時代、チョコレートは特権階級の飲み物でした。
原料となるカカオは、アステカ王国の勢力下にあった各地から首都に運ばれてきて、貢ぎ物として納められていました。しかし、1521年にコルテスがアステカ王国を滅ぼすと、スペイン人が貢ぎ物だったカカオを受け取るようになったのです。
スペイン人は、支配下においたメキシコを中心に、庶民にカカオドリンクを飲む習慣を広めました。その売り上げはスペイン人が手にしました。原住民のインディオの人たちは、カカオ豆をすりつぶしただけで甘味のないものを飲み続けていましたが、ちょうど同じころ、メキシコに砂糖が入ってきたので、美味しい甘味のついたカカオドリンクを飲む習慣が一気に広まりました。17世紀末までは、メキシコが世界最大のカカオ消費地でした。
一方、スペイン人が母国に持ち帰ったカカオも、スペイン国内に広がっていきます。国王に献上されたカカオは、焙煎してすりつぶしたあと、水や砂糖を加えて温め、甘味をつけて美味しく飲めるようにしました。
砂糖もカカオと同様に、当時は薬として扱われていました。輸入品のカカオも砂糖も貴重なものだったので、王室をはじめ、カトリックの聖職者や貴族など、特権階級の人たちだけが口にできるものでした。
チョコレートは、地位と富の象徴だったのです。甘くて美味しい飲み物としてのチョコレート。今のココアのルーツですね。本書では、メソアメリカで飲まれていたものをカカオドリンクと呼んできましたが、ここからはチョコレートと呼んでいきたいと思います。
美味しく加工されたチョコレートは、16世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパ各地に広まっていきました。
修道院でチョコレートが作られた
カカオの調理をする舞台のひとつとなったのが修道院でした。スペインのカタルーニャ地方に今も残るポブレー修道院は、12世紀半ば、イスラム教徒に占領されていたバルセロナ地域を、レコンキスタ(国土回復運動)によってイスラム教徒から奪回した勝利の記念として建設が始まった修道院です。
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