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公認会計士が「監査業務から離れる」根本的な原因 中小型銘柄が「監査難民化」の危険に陥る背景

東洋経済オンライン / 2024年2月13日 8時30分

具体的には、監査先の経営判断に関わることや、財務諸表の作成作業への関与など、6項目が、監査証明業務とは同時提供できない非監査証明業務に指定された。この結果、同時提供できる非監査証明業務は、監査対象となる財務諸表の作成方法や、内部統制システムに関する助言・指導など、ごく限られた業務だけになった。つまり、経営判断に関わるコンサル業務ができなくなったのだ。

これ以前は業界のことを知り尽くしたベテランの会計士が、監査先の経営者に経営指導をすることは普通に行われていたし、会計士が財務諸表の作成方法の助言にとどまらず、作成自体を手伝ったりすることもあった。時には不正に手を染めようとする経営者を諫めて思いとどまらせたりもしていた。それはまさに経営判断に関わるコンサル業務だ。

だが、自身が作成に関与した財務諸表を、自分で監査するということは自己監査に当たってしまう。癒着を生んで不正会計の片棒を担ぐ会計士を生む温床にもなる。

だから、法改正後に公認会計士試験に合格し、監査法人に入所した世代は、監査が面白かった時代を知らず、ストレートに「監査はつまらない」、上の世代は「昔は監査は面白かった」というのだ。

若手は非監査業務に未来を見ている

上場会社監査に限らず、監査は、監査契約を締結する相手も、監査報酬をもらう相手も、監査先の会社自身だ。チェックする相手から報酬をもらって公正妥当な監査ができるのか――。

昔からある古くて新しい議論だが、上場会社監査の場合、真のクライアントは監査先ではなく監査先の株主たちだ。会社は株主のもの、という前提に立てば、監査先からもらう報酬は、監査先の上場会社を通じて株主からもらっているのだ、という理屈が成り立つ。

そんなことは会計士自身、「理屈では理解しているし、“市場の番人”としての自負もないわけではない」(4大監査法人出身の30代の公認会計士)。

だが、直接接点がある会社側からは、感謝されるわけでも、労いの言葉をかけられるわけでもない。そもそも株主とは接点すらない。

会計士も人の子、直接向き合っている相手から感謝されたり労われたりしなければ報われない。だからクライアントと苦楽を共にし、感謝もされるコンサル業務に人が流出してしまう。

昨年7月、当時のPwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)が公表した、「次期中期経営ビジョン」は、入社から3~5年の若手が中心となり、10年後の2030年時点の、監査法人としてのありたい姿をまとめたものだった。

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