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インフレでも「上がらない家賃」の裏に日本の宿命 「家賃は手取り収入の3割が目安」と言うけれど

東洋経済オンライン / 2024年2月15日 11時10分

アメリカでは全体のインフレから約1年弱のラグをもって動く傾向が続いている。

日本の家賃インフレの弱さは構造要因である可能性が高い。

「9年ぶり高水準」でも変化率は沈黙

日本経済新聞は2023年12月8日に、「『横ばい』家賃に上昇圧力 都区部、9年ぶり高水準」との記事を配信し、「都市部を中心に賃貸住宅の需要が高まっているほか、資金も流入」とした。この背景に、「簡単に上がらないとされていた家賃が動き始めた」という見方があるという。

もっとも、やや上振れている都区部家賃でも前年同月比はゼロ%台前半であることには変わりはない。「9年ぶり高水準」なのは事実なのかもしれないが、安定した価格上昇とは程遠い状況である。

一般に、サービス物価は賃金との連動性が高いと言われているが、そのイメージと合致するのが「家賃」だろう。例えば、「家賃は手取り収入の3割が目安」と言われるように、「衣食住」の中で固定的な支出である家賃は、家計の可処分所得を目安に決定されるイメージがある。

つまり、可処分所得が増加しているのであれば、家賃もそれに応じて上がっていくことが予想される。

しかし、実際のデータはイメージとは異なっている。

家計調査において「民営借家」を住居とする世帯(2人以上世帯のうち勤労者世帯)について「可処分所得」と「家賃地代(の支出)」を確認すると、「可処分所得」は2010年頃に底打ちし、その後は増加傾向にあるが、「家賃地代」の増加は限定的であることがわかる。

2010年よりも前の時期では、「可処分所得」が減少する中で「家賃地代」も連動してやや減少するケースが見られたが、最近の「可処分所得」の増加に家賃はほぼついていけていない。その結果、「可処分所得」に占める「家賃地代」の割合は低下している。

「家賃は手取り収入の3割が目安」といった安定的な関係にはなっていないことは明らかである。

人口減で供給過剰だと賃借人が強い立場に

家賃と所得の連動性が失われた要因として真っ先に思いつくのが、人口減少や空き家の問題である。国連の人口データ(各年1月時点)によると、日本の人口は2010年をピークに減少傾向にある。

つまり、人口減少により賃貸需要が減少し、賃貸住宅が供給過剰となり、家賃の弱さにつながっていると考えることができる。賃貸物件が供給過剰となっている状況では賃借人のほうが強いため、家賃には低下圧力が加わりやすい。

例えば、最近の賃上げ機運を敏感に嗅ぎ取った賃貸物件のオーナーが、月10万円の家賃を5%値上げして月10.5万円に引き上げたとしても、それを理由に賃借人が退去して1カ月でも空室状態になってしまったら、それを回収するのには次の賃借人が最低20カ月は安定的に居住してくれないと回収できない(10万円÷値上げ分0.5万円)。

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