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4月に日銀が利上げをすると一体どうなるのか いよいよ金融政策の転換のときが迫ってきた

東洋経済オンライン / 2024年2月17日 9時30分

   
もし、この通りになれば、長期金利上昇を防ぐ措置以外の「非伝統的」と位置づけられる多くの金融政策はなくなる。同時に、政策金利を引き上げる対応は、2007年の利上げ以来、実に17年ぶりとなる。

「日銀の利上げ」は大きなリスクなのか?

では、4月に実施される可能性が高い日銀の利上げをどう考えればいいのか。2000年代は日本銀行が利上げを始めた後に、程なく経済が再び停滞してデフレに陥ってきた。「今回も同様の失敗を繰り返すのではないか」との疑念を抱く向きも多く、筆者も無視できないリスクシナリオと認識している。

ただ、現在と2000年代(2000年、2006年)を比べれば、日本経済やインフレに関する状況は、かなり変わっていることも事実である。

まず、 先述の通り、春闘賃上げ率が約4%での推移が2年続くとすれば、これは1993年以来だ。雇用を確保するために賃上げを積極化する企業は、2000年代はほぼみられなかったが、今は「ゼロインフレ」を前提とした企業行動が変わり、多くの企業が人手を確保するために賃上げが必要との認識が広がっている、とみられる。

さらに、2000年代は「2%インフレ目標」が設定されていなかったことも大きな問題だった。2000年代はインフレ率がゼロをやや超えた時点で日銀は利上げを行った。当時、日銀は「ゼロ%インフレ誘導策」を行っていたと筆者はみなしているのだが、こうした政策姿勢で決断された、利上げは結果的に「勇み足」であり、それが故に日本経済がデフレに戻る一因になった。

一方、現在、2%物価目標は、政府と日銀の間で明確にコミット(目標実現を約束)されている。

もし2000年代のように利上げ後に、2%インフレの軌道から下振れれば、日銀は政治的な説明責任を課され、金融緩和を再び強化することになる。2013年の「金融緩和のレジーム転換」でデフレが和らぎ雇用が生まれて社会が安定したことで長期政権となった安倍政権を支えた事実を、多くの政治家が認識していることも大きい。こうした中で任命された植田総裁にとって、「デフレ完全脱却」を実現するインセンティブになっているようにみえる。

もっとも、日本では「2%インフレ目標は高すぎる。もっと柔軟な目標にすべきだ」といった、筆者には理解しがたい見解も耳にする。だが、こうした論者は少数派と見られる。仮に、2%物価目標に関するコミットを岸田政権が緩めたりすれば話は変わるが、岩田規久男元副総裁が、かつて就任前に「デフレの番人」と皮肉ったような失政を、日銀が再び繰り返す可能性は高くないように思われる。

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