紫式部が主人公の光源氏に託した"恋愛のかたち" 「通い婚」が普通だった平安時代の色恋を解説
東洋経済オンライン / 2024年2月18日 14時0分
同著には、こういうことも書かれています。
「10世紀初頭に成立した『伊勢物語』には、色好みの主人公が、人妻と語らう、すなわち性愛関係をもつ話がけっこうある。しかし、10世紀末から11世紀初頭に成立した『源氏物語』では、密通ゆえの苦悩がテーマになっている。『摂関政治』のころには、密通がタブー視されたことが知られる」
じっさいのところ、貴族社会の女性は、白昼、男性に顔を見せることは出来ませんでした。
これまた、男たちは気になる女性の噂を聞いたり、かいま見たりすることで、情報をあつめていました。そのうえで、手紙を送って反応をみるのですが、女性のほうでは、それを読んで、どんな男なのかを判断します。
そして、「まぁ、いいかしら」と思い、それなりに自分の気持ちを匂わせた和歌などを返せば、男が夜に訪問する、という段取りになります。
「いやいや、待てよ。いきなり自宅に訪問とは?」
と疑問にも思われましょう。が、「昼間にデート」という習慣はないのですから、とにもかくにも女性の寝室で、しばらく会話をしたのちに、閨事(ねやごと)ということになります。
気に入ったら手紙で意思表明
夜明けとともに(ときには、夜のあいだに)、男は自分の家に帰っていきます。そのあとで、男はまた手紙を出します。それが早ければ早いほど、「あなたのことが気に入った」というサインになるわけです。女もそれに対して手紙を返し、そこに、しゃれた和歌などが付けられていれば、より好印象となります。
おたがいに相性がよければ、3日連続で通い、めでたく結婚ということで、「所顕(ところあらわし)」──今でいえば、結婚披露宴をおこないます。でも、ふたりがいっしょに住むことはまれで、たいていは男が女性の家に通います。
所顕をすることで、その男性は通うことを正式にみとめられるのです。
スムーズに行けば、スピード婚かもしれませんが、何カ月、いや、数年かかることもあります。紫式部と宣孝の場合も、紫式部が越前に行ってしまったという事情もありますが、結婚まで1年以上かかっています。
また、見方によっては、通い婚が普通であった時代は、ほかのところに、「新たな妻をつくりやすくなる」ということになります。
逆のケースも考えられるわけで、ふだん夫は家にいないのですから、和泉式部のように、別に情人をこしらえたりする。やはり、簡単には片付けられない制度ですね。
紫式部の場合は、夫の宣孝がほかの妻のところに通い、「ごぶさた状態」になったことがありました。嫉妬と寂しさに悩んだ紫式部ですが、夫の死後にはほかの妻や、その子どもたちとも手紙を交わし、亡き宣孝を偲んだりしています。
岳 真也:作家
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
なぜ『源氏物語』は男女の色恋沙汰ばかりなのか…平安時代の宮廷が紫式部たち"女房"を重用したワケ
プレジデントオンライン / 2024年6月30日 18時15分
-
紫式部「アラサーで夫と死別」幼い娘との壮絶経験 気持ちがすれ違う中で起きた悲しい出来事
東洋経済オンライン / 2024年6月29日 15時0分
-
「千年古びない浮気描写」の妙を角田光代と語る 源氏物語の新訳に挑んだ5年がもたらしたもの
東洋経済オンライン / 2024年6月25日 9時0分
-
「周明に利用された、ショック!」という感じではないんじゃないかな…吉高由里子が語る“まひろ”の心境【君かたり】<br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月17日 7時15分
-
実は愛妻家だった? 「光る君へ」の藤原道長の意外な一面とは【夫婦・子育ていまむかし Vol.23】
Woman.excite / 2024年6月11日 19時0分
ランキング
-
1ソニーが録画用ブルーレイディスク生産終了へ、光ディスクの記録メディアから完全撤退「市場が縮小」
読売新聞 / 2024年7月5日 18時12分
-
2日本に豊田章男氏がいたのは幸運だった…「EV化の真実」を主張し続けた豊田氏が筆者に明かした「真意」
プレジデントオンライン / 2024年7月5日 8時15分
-
3妻に先立たれた65歳、年金約17万円・おひとり様シニアを襲う<老後破産へのカウントダウン>
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月3日 9時0分
-
4今度はなんのコラボ? マクドナルドのX、次回の「ハッピーセット」のヒント画像公開...期待高まる
J-CASTニュース / 2024年7月4日 16時49分
-
5ニッカ、4年ぶりウイスキー新ブランド発表
日テレNEWS NNN / 2024年7月5日 22時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください