AI半導体の雄「エヌビディア」が市場に満額回答 世界の株価をも左右する半導体関連銘柄
東洋経済オンライン / 2024年2月23日 9時0分
エヌビディアの今後を占ううえで市場が注目していたポイントの1つは、中国向け事業の動向だ。
アメリカ政府は2022年10月、エヌビディアの主力GPU「H100」「A100」の中国への輸出を規制した。規制を回避するため、エヌビディアは性能を抑えた中国向け製品「H800」「A800」を開発・出荷していた。
だが、いたちごっこは続く。アメリカ政府が2023年10月に導入した新たな規制によって、中国専用品の出荷も停止に追い込まれてしまったのだ。2023年8月〜10月のデータセンター売上高のうち中国向けが20〜25%を占めていただけに、影響が懸念されていた。
結果的にはほかの地域への供給でカバーし大幅な増収となったものの、2023年11月〜2024年1月の中国向け比率は1桁台%にまで落ち込む大打撃を受けたようだ。現在は、さらに新たな規制に対応した製品の出荷を進めていることを明らかにした。
もう1つの焦点は、供給の問題だ。
エヌビディアは、自社工場を持たずに製品の企画・設計に特化。製造は台湾の半導体製造受託会社であるTSMCに委託しているが、昨年以来、急増する需要に生産が追いついていない状態が続いていた。
エヌビディアの決算説明会でジェンスン・ファンCEOは、「全体的に供給状況は改善している」とした一方で、「すべての新製品は需要が供給を上回っている。今後も需要は供給を上回るだろう」と話した。
新製品投入ペースは緩めず
製造委託先であるTSMCは、生産のボトルネックになっている先端品の組み立て工程の工場を建設するなど増産を進めている。
同社の魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは1月に行われた決算会見で、同工程の状況について「十分な生産能力を提供できない状況はおそらく来年まで続くだろう。2024年は生産量を2倍に増やしているが、2025年も増産を続ける」とコメントしている。
需給が逼迫する中でもエヌビディアは、より高性能な新製品の投入ペースを緩めていない。今年半ばからは「H200」の出荷を開始する予定。生成AIが回答を出力する際に必要な推論の能力を、2022年に発表した現在の旗艦GPU「H100」の2倍に高めたモデルだ。
今後も市場の期待を超えるスピードでの成長を続けられることができるのか。そのハードルはますます高まっている。
石阪 友貴:東洋経済 記者
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