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「給料よし、残業なし」の会社を社員が辞めるワケ 心理的安全性よりも重要な「キャリアの安全性」

東洋経済オンライン / 2024年2月29日 6時55分

「キャリアの安全性」という表現をしますが、「この会社で働き続けて、将来の展望は開けるのか」「キャリアを成長させるために周囲からのアドバイスや支援を得られるのか」「ロールモデルになる先輩社員がいるか」「社外からも評価される人材に成長できるか」「教育研修や業務経験を通じて成長する機会はあるか」などに対する環境が整えられていなければ、不満のないホワイトな職場でも不安を感じた若手は2、3年で離職します。

昭和の時代は、「石の上にも三年」どころではなく、5年、10年辛抱するのは当たり前でした。終身雇用制度で定年まで働くのが前提のキャリアプランだったため、時間的に余裕があり、本人も上司も「今は大変でも、40代で課長、50代で部長を目指そう。給与も上がる」という期待があったからです。

ところが現在は、日本全体が右肩上がりの経済成長ではなくなり、終身雇用制度が形骸化し、早期退職や希望退職も一般化し、会社そのものも定年まであるかどうかわからない時代です。

だからこそ、定年まで勤める前提ではなく、あくまで自分の将来のために、大手の知名度の高い会社や教育制度の整った会社をキャリアのスタート地点として選ぶという人たちが増えてきているのです。

私は大学院で講義を担当していますが、20代の大学院生にキャリア観を聞くと、「卒業後はコンサルティングファームに就職するが、定年までいるつもりはなく、一定の業務経験を積んだら独立か転職を想定しています」「自分は会社を移っても人事としてキャリアを積みたいので、ジョブ型で最初から人事で働ける会社だけに応募しています」と当然のように語っています。

大事なのは若手社員の「ナラティブ」

では、どうすれば若手社員の離職を食い止められるのでしょうか。

ここで、あるIT企業の例をご紹介します。その企業では若手社員の離職が問題になっていました。昨日まではやる気を見せていた(気がする)のに、翌日には何の理由も言わずに「辞めます」と退職願いを持ってくることもあったそうです。上司は慌てて退職理由を聞いたり慰留を試みたりしますが、この状態になってからでは全て手遅れです。

そこで、部下と日常的にキャリアについて面談を行うトレーニングを提供したことがあります。言ってみれば、離職率を軽減するための研修です。

人事コンサルタントとして、私が複数の管理職から、具体的なケースとして相談されたのが、「管理職になりたくない」「昇格や昇給には興味がない」「定年まで勤めるつもりがない」「なかなか本音を語ってくれない」という若手社員とのコミュニケーション方法でした。

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