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「裸になって向き合った」ハンセン病回復者の人生 新作ドキュメンタリー「かづゑ的」熊谷監督に聞く

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 14時0分

彼女は前向きに生きてきた一方、悩むところは深く悩んできた。ハンセン病患者は社会のあらゆる場面で差別されてきたが、かづゑさんは10代の後半で療養所内でのいじめ、「差別の中の差別」に遭っている。50代に入ってからは長い間うつ状態にも陥った。

そこからどうやって脱したか。支えになったのは、肉親や夫からもらった「愛情の貯金」と、膨大な読書量から得た、その時その時を生き抜く「知識」だ。

かづゑさんの人生の背後にはハンセン病がある。だが、ハンセン病だけではない。映画では、かづゑさんの生き方を通して、人間が生きていくために大切なことは何かという普遍的なテーマに迫ったつもりだ。

――映画の中で、かづゑさんはまったく壁を作っていないように見えます。どうすれば相手に壁を作らせずに撮影できるのでしょうか。

私には映画作りの3原則がある。①ラブレターを書く、②気持ちのうえで相手に裸になってもらうために、自分も裸になる、③テーマ全体についてきちんと勉強する。

「あなたが好きだ」、「撮りたい」という気持ちをまっすぐに伝え、そして自分自身も“裸”になる。勉強をして知識を得て、大事なことに気付けるようにしておく。これらを心がければ大体うまくいく。

撮影中は、質問を頭で考えるというより、相手が口にした言葉に反射的に返せたほうがいいと思っている。飛んできたボールをいかに返すかは「映像的運動神経」を駆使する。そのほうが、自分のイメージに当てはめた作品を作るより、予想外のものができて面白い。

かつて水泳の飛び込みをしていた。だから私には、とりあえず飛び込んでみる習性がある。理屈ではなく、皮膚感覚的な部分で、「とりあえずやってみよう」と。

「かづゑ的」も、そういう心構えで撮ったつもりだ。

大月 えり奈:ルポライター

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