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志尊淳「今の時代の中、俳優として生きる決意」 杉咲花に寄り添った『52ヘルツのクジラたち』

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 13時0分

「その人物はどのように生きているのか?」という内面的な側面に深く寄り添い、理解することに努めた。特に、トランスジェンダー男性を演じるにあたり、誤解を招く表現にならないよう細心の注意を払った。トランスジェンダー当事者である俳優・若林佑真にトランスジェンダーをめぐる表現の監修に入ってもらい、全シーン、全セリフ、一緒に向き合い二人三脚で岡田安吾という役を作り上げていった。

「役者としては、演技だけでなく、メディアへの対応や宣伝方法など、あらゆる面で真剣に向き合う必要があると感じていました。今も生きづらさを抱えている人たちはたくさんいる。この作品を世に出すことが、そんな人たちを支えることにつながることを願いながら撮影に臨みました」

若林佑真のサポートだけではなく、成島監督からは「衝動で演技をしろ」と言われていた。そのため、撮影までは自分なりに深く考えて準備したが、実際に撮影するときは、そのすべてをいったん脇に置いて、「衝動」に従って感じるままに演じるよう心がけていたという。

「もう全部が自分」と受け入れる

今回はそれだけでなく共演者でもある杉咲花の存在が志尊を突き動かしていた。

「岡田安吾は、多くの感情を抱えながらも、魂の番(つがい)である貴瑚に寄り添うことを心がけ、何か役立つことをつねに探し続けている。基本的には他人の行動や感情を受け止める側の人物です。そのため、僕は杉咲花さんの演技に集中し、自分から積極的にアクションを起こすよりも、どれだけ相手に寄り添えるかに注力しました。これは、キャラクターとしての寄り添いだけでなく、俳優としての志尊淳が杉咲花に寄り添うことも重要だと感じていました」

自分の役に対する他人の評価はいったん忘れ、完全に相手に寄り添うことに集中した。

これは彼にとって初めての経験であり、その影響による自身の変化について振り返る。

「初めて少し不安定な気持ちになりました。以前はプライベートと仕事をはっきり分けていましたが、この役を通じて、その境界がぼやけてきたような新しい感覚が今も続いています。必ずしもネガティブなことではなくて。少し不安定だと感じる瞬間がありますが、それは新しい自分を発見する過程の一部だと捉えているんです」

その不安定さが、表現者として強みになったりするのか?

「この不安定さも含めて自分というか。俳優という仕事をしてると、もう全部が自分だってある種受け入れないとやっていけない。以前は評価を気にしたり、良い演技を心がけたりしていましたが、今はそうした感覚からは離れ、現在の自分を受け入れられるようになりました。これが今の自分だと思えるようになったことは、大きな変化です」

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