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豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 6時30分

今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。

予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。

客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。

これは、万が一車両の不具合が発生した際、その不具合があった車両だけを切り離し、別の運行可能な客車を代わりに連結できるということでもある。寝台車のような特殊な車両の場合は同じ設備の車両が用意できず、個室寝台の代わりがクシェット(簡易寝台)や座席車になってしまうといったことは過去に何度も発生してきたが、運休するよりはマシで、本来のサービスを受けられない乗客に対しては返金などのお詫びをして終了となる。

ところが、固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。

日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる。

「固定編成」は欧州に向いているのか?

ヨーロッパの鉄道は過去20年で大きく変化し、列車の編成も日本のように動力分散方式の電車・ディーゼルカーや、客車列車でもそれに準ずる固定編成の列車が増えてきた。2023年冬から走り始めた夜行列車「ナイトジェット」の最新型も、ついに固定編成を採用するに至った。

ただ前述の通り、固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。

ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない。

橋爪 智之:欧州鉄道フォトライター

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