「週刊誌を訴える」芸能人続出が暗示する"臨界点" 松本人志、デヴィ夫人ら相次ぐ提訴は何を意味するのか
東洋経済オンライン / 2024年3月1日 15時0分
これは自身に関する記事だけでなく、週刊誌そのものの報道姿勢を「言葉の暴力」と考え、「世間に問いかけたい」という強い意志を感じさせるコメントでした。
さらに「私は、事を荒立てず鎮静化を待つのが良いのか、あるいは、人がさらに離れて行くリスクも負いつつ法的措置に及ぶのが良いのか、熟慮を重ねておりました」とつづっていたことも示唆に富んでいます。これまで多くの芸能人は、週刊誌に記事を書かれ、それが真実とは異なっていても「事を荒立てずに沈静化を待つ」という選択肢を採るのがセオリーでした。
その背景には「反論すると『人気商売なのに器が小さい』と言われ、タレントイメージがさらに損なわれる」「『相手にしたら相手の思うつぼでこちらの負け』とみなされてきた」という昭和のころから続く芸能界ならではの考え方によるところもあるのでしょう。
短期間で人々のリテラシーが急上昇
しかし、時代は変わり、SNSで集中的に攻撃を受けてしまうほか、一連の情報が半永久的にネット上に残り続けてしまうデジタルタトゥーの問題などもあって、「事を荒立てずに沈静化を待つ」という方法では乗り切れなくなりました。つまり書かれた芸能人は週刊誌を訴えるなどのアクションを起こさなければ、「報道が正しい」とみなされて人々の攻撃を受けるほか、数年過ぎたあとも忘れてもらえず、再度の攻撃を受けてしまうリスクが残ってしまうのです。
報道の真偽こそわからないものの、松本さん、デヴィ夫人、三代さんに共通しているのは、「週刊誌報道の是非を世間に問いたい」という姿勢。特に松本さんの連日に及ぶ報道を踏まえてコメントする形ともなったデヴィ夫人と三代さんは、世間の風向きが変わりはじめたこともあってなのか、堂々と週刊誌報道の是非を問う姿勢を見せた感がありました。
これまで芸能人は自分を守るディフェンスすらさせてもらえず、「事を荒立てずに沈静化を待つ」という、黙って耐えるのみの対応が多かっただけに、ようやく反論体制が整いはじめたのでしょう。週刊誌を提訴した芸能人たちは訴訟によって自身の名誉回復はもちろんのこと、週刊誌報道が変わるきっかけになってほしいと願っているのではないでしょうか。
そしてもう1つ、「芸能人が週刊誌を提訴」という流れが今後も続きそうな背景として挙げておきたいのが、名誉毀損の訴訟における人々のリテラシーが短期間で飛躍的に上がっていること。
『週刊文春』による松本さんの報道をテレビやネットメディアが連日報じ続けていることで、世間の人々は多くの情報を得て日に日に理解度を上げています。
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