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エネオスHD、異例の「東燃出身」社長が誕生の深層 セクハラ解任の後始末で「黒バット」文化も激変

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 17時30分

また、エネオスHD傘下で石油製品の精製・販売など主力事業を担うエネオスの社長には山口敦治執行役員電気事業部長が就任する。山口氏は三菱石油出身で和歌山製油所所長や製造部長のほか、再生可能エネルギー事業部長も歴任した。

浮き彫りになった「脱黒バット」

エネオスグループで、非・日石かつ製造部門出身の宮田氏や山口氏が社長に就任したことは大きな意味を持つ。

「旧日石が主流のエネオスは『販売の会社』。製造部門は主に旧東燃系が担う形になっていた。今回、製造系のトップがエネオスの経営の中心を担うことになり、“脱黒バット“が進むことになる」

そう話すのは旧日石出身で日沖コンサルティング事務所の日沖健代表だ。「黒バット」とは、旧日石におけるエリートコースを表す隠語。「黒」は産業エネルギー販売部門、「バット」は勤労部長が野球部部長を兼任する伝統から勤労部門を指している。

2022年にセクハラ問題で辞任した杉森元会長は「バット」「黒」両方の経歴を持つ。同じく2023年末に社長を解任された斎藤氏は販売企画部長などを歴任した典型的な「黒」の人物だ。(詳細は、2023年12月20日配信記事:「ENEOS経営トップ、2年連続でセクハラ解任の病理」)

ある業界関係者は、「旧日石の勤労畑の人間は労働組合と酒を酌み交わすのが仕事で、杉森氏も酒豪、豪腕として昔から社内で知られていた。一方販売部門は、特約店の店長ら取引先と酒を飲み、ゴルフをするのが仕事だと思っている文化がある」と話す。かつては有力特約店と密接な関係となり、その支持を得て社長ポストを射止める時代もあったという。

記者会見では「取締役の比率を見ても旧日本石油の方々が強い影響力を持っていた。そこがモラルハザードを起こしていた一因ではないか」との質問も飛んだ。

業界全体に蔓延する悪しき商習慣

指名諮問委員会の工藤委員長は「社外取締役になって3年経つが、そのような印象はまったくない」と言う。しかし、会見で配布された資料には「あるべき社長像」として、「古い慣習の刷新」が掲げられている。これこそが「脱黒バット」の狙いだろう。

「会社資料に掲げられている『古い慣習の刷新』とは何か」と記者に問われた宮田氏は、「100年以上続いた石油や石油化学事業をいままでの進め方でやっていてよいのかということだと理解している」などと述べた。

石油業界に詳しい公認会計士の中澤省一郎氏は、「石油業界には元売りが系列特約店などに納入する卸価格をあとから値引きする“事後調整”という悪弊が根強く残っている。差別対価を生むこうした商習慣が特約店との密接な関係を生み、ひいては女性が絡む過剰な接待につながってきた。古い習慣とは、こうした業界全体に蔓延する悪しき商習慣にほかならない」という。

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