34年ぶり最高値「日経平均」が次に目指すところ 「思い出プット」を超えることこそ重要だ
東洋経済オンライン / 2024年3月3日 10時0分
いまの場合、過去に実現した株価は、いつかは再現するのであれば、現実の株価がそれ以下である限り、いつかは、売却益を得て処分できる。だから、「いくら買っても安全」ということになる。
人々がこのことを信じれば、買いが増え、株価が上がる。つまり、根拠のない期待が現実のものとなる。要は、人々が信じるかどうかなのだ。
上で述べたことを、「いまの日本の株には、3万8915円87銭で売れるというプット・オプションが付いているようなものだ」と表現することができる。
経済実態との関連がないという意味で、「バブル・プット」と呼べる。あるいは、「過去にここまで行ったのだから、いつかは再びそうなるだろう」という意味で、「思い出プット」とも言える。
ここで、本来の意味でのプット・オプションについて説明をしておこう。
これは、ある決められた価格で売れる権利のことだ。
先物売りと似ているが、先物売りは必ず実行しなくてはならないのに対して、プットオプションは、「オプション」という言葉が示すとおり、権利であって、それを実行しなくてもよい。そのかわり、オプションは、タダでは入手できず、一定の対価を払わなければ取得できない。
さまざまな金融商品について、オプションの市場が形成され、取引が行われている。
ところで、本項の最初に「日本の株にプットオプションが付いている」と言ったが、それは、上記のような本物のオプションではない。
第1に、その権利は誰にも与えられているのであって、それを獲得するために対価を支払う必要はない。
第2に、いつでも売れるわけでなく、「そのうち売れる」ということにすぎない。
リーマンショックの引き金「グリーンスパン・プット」
これまで、「グリーンスパン・プット」とか、「バーナンキ・プット」ということが言われてきた。これは、「アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が、景気が悪化すると、株価の下支えとなるように金融緩和政策を行う」という意味だ。グリーンスパン・プットは、リーマンショックの原因となった。
本物のプットは下値を支えるのだが、「思い出プット」は、イリュージョンによって、さもなければ下がる株価を吊り上げる。PERなどの指標はお構いなしだ。
もしそうだとすると、3万8915円87銭以上に大きく株価が上昇することにはならない。しかし、ある程度下がっても、底なしに下がるわけでない。「思い出プット」が株価を吊り上げてくれるからだ。こうして、生かさず、殺さず。半殺し状態が実現される。
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