TSMC創業者とソニー会長が熊本で明かした秘話 ソニー盛田氏の言葉とTSMC日本進出の第一声
東洋経済オンライン / 2024年3月4日 8時0分
そしてモリス・チャン氏の口から語られたのは、JASMのパートナーとして重要な役割を果たしたソニーとの50年以上前のなれ初めだった。
盛田氏が話した「日本の工場」の特長
同氏が初めて日本を訪れたのは1968年。当時世界トップの半導体メーカーだったTIの副社長としてだった。そこで会ったのがソニー創業者の1人、盛田昭夫氏だ。
「ソニーとの合弁事業を行うため、盛田氏を訪問しました。記録を見ると、そこで2時間のミーティングをしていました。当時、盛田氏はすでに伝説的な人物で私より10歳も年上でしたが、非常によく接していただいた」
今でもよく覚えている、と言って切り出したのはこんなエピソードだった。
「『あなたはいい意味で、日本での工場のイールド(歩留まり)に驚くだろう』と(盛田氏は)言っていました。合弁で1973年に鳩ヶ谷工場(埼玉県)、それから大分県の日出に工場を設立しましたが、そのイールドの高さには本当に非常に驚いた」
モリス・チャン氏はその後TIを退職し、1985年に台湾の研究機関である工業技術研究院の院長に就任している。話はTSMCの創業につながっていく。
「1985年に台湾に行ったとき、日本と台湾は文化や人材の能力という点で似ているということに気がつきました。そこで、半導体製造に特化するファウンドリー(受託製造会社)を作ろうと思ったのです」
この1〜2年で急速な盛り上がりを見せるAI(人工知能)向け半導体への期待も口にした。
「(TSMCの)AI担当者が最近、必要な生産能力について、数千〜数万枚というウェハーの枚数ではなく『新たな工場がさらにいくつ必要なるか』という話をしていました。完全にその話を信じているわけではありませんが、そのどこか中間あたりの生産能力が必要になるのかもしれない」
一方のソニーからは、ソニーグループの吉田会長CEOと、グループ内で半導体を手がけるソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長が出席。吉田社長が語ったのは、今回のTSMCとの合弁がどのようにして始まったのかだった。
2021年1月の台北での会談が始まり
「2021年1月、私と半導体事業の責任者である清水は台北のホテルで(TSMCのCEO)C.C.ウェイ氏とお会いしました。ロー、ケビン、ジョナサンといった幹部の方々もご一緒でした。われわれは、ロジック半導体の調達について議論するために出向いたのです」
【3月4日13時28分追記】初出時の「2020年4月」を「2021年1月」と修正します
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