損保4社「政策株ゼロと営業協力見直し」の前途多難 「ごまかしと過剰な協力」に金融庁が目を光らす
東洋経済オンライン / 2024年3月5日 7時0分
企業・団体向け保険におけるカルテル問題をめぐって、損害保険大手4社は2月29日、行政処分に伴う業務改善計画書を金融庁に提出した。
その内容は関係する役員の処分を手始めに、取引企業からの商品購入といった過剰な本業支援(営業協力)の抜本的な見直し、取引企業や傘下の代理店(機関代理店)への出向者の絞り込み、収入保険料(トップライン)に偏重した営業成績の評価制度の改定まで多岐にわたる。
中でも注目を集めたのが、政策保有株の取り扱いについてだ。
政策保有株とは、取引関係の維持・強化を狙って保有する株式のこと。日本では保険会社に限らず、銀行などの金融機関と大手企業が株式を互いに持ち合うケースが依然として多い。
小手先の対応でお茶を濁す懸念
「企業向け保険契約の入札などにおいては、政策株式保有割合や本業への支援など、保険契約の条件以外の要素が少なからずシェアに影響を及ぼす場合があり、営業担当者にとっては、シェア獲得・拡大に向けた適正な競争に対する意欲が損なわれた可能性がある」
金融庁は2023年末に発出した行政処分の中でそのように指摘。健全な競争を阻害する政策保有株については、売却を進めるよう大手4社に強く求めていた。
結果として、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の2社は2030年3月末までに、損害保険ジャパンは2031年3月末までにゼロとする目標を改善計画書に明記。東京海上日動火災保険は、「具体的な達成時期は今後決定する」としたうえで「なくすことを目指す」としている。
ただ現時点においては、大手4社が掲げる目標の実現可能性が高いとは、お世辞にも言えない。その理由は大きく2つある。1つは、取引企業の株式の保有目的を「政策保有」から「純投資」に切り替えることで、「政策保有株はゼロになった」といくらでもごまかすことができるという点だ。
もし看板を掛け替えただけの対応にとどまれば、投資家などから批判が噴出する可能性があるものの、検証は早くて6年後だ。そのころには世間の関心が薄れており、また検証をしようにも「この株は純投資だ」と損保が言い張れば、その主張を覆すのは簡単ではない。
損保がそうした小手先の対応でお茶を濁すのではないかという懸念が浮上するのは、同じ保険業界で実例があるからにほかならない。国内生命保険大手4社の株式保有額(時価ベース)は、2023年末時点で合計約22兆9000億円。そのうちのおよそ半分を持つ日本生命では、保有する株式の92%(2022年度)を純投資目的と整理している。
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